天才肌と言われたけど、感覚だけではできないですよ――加藤茶78歳、笑いと歩んだ半世紀
「最初はグー」も、とぐろ巻きのうんこも
メンバー間で衝突することも、もちろんあった。 「スタッフと作家が30人くらいいたんです。彼らに誰が一番ウケたかがバロメーター。やっぱりシビアですよ。そうじゃないとやっていけない。僕は考えるよりも動く派、長さんと志村は考える派。天才肌だと言われたけど、それもキツかった。感覚だけではできないですよ。本番で『これをやっちゃおうかな』と試してみて、ドーンとウケたりする。でも、そこに至るまでは考えていますから。本番までに、立ち稽古やリハーサルを5、6回。そのうちに飽きてくる。そしたらアドリブを足していくんです。飽きるのは悪いことじゃない」 じゃんけんの「最初はグー」など、今では当たり前になっているものもこの番組から生まれた。 「『最初はグー』は、志村と仲本(工事)の間で始まったんですよ。とぐろを巻いたきれいな色のうんこを作ったのも『全員集合』。可愛らしいうんこに見せるのに、すごく悩んで。黄色だと馬鹿っぽいので、緑色をちょこっと入れたりとかね」
臨場感をお茶の間に伝えるため、カメラの位置にもこだわった。 「テレビの中というのは遠いじゃないですか。茶の間にどっかんどっかんウケている雰囲気を届けようと、撮り方を変えてもらいました。最初の頃は、オチになる場所でカメラが待っていたんですよ。すると、ここでオチだな、と分かっちゃうでしょ。だから基本的に引いてくれ、と。一人をカメラで抜くと、他の人の動きも見えない。バミリ(立ち位置の目印)もなくしました。長さんに『馬鹿野郎』って怒られて、袖まで逃げちゃってもいい。カメラが追いきれなかったら、追えなくてもいい。セットチェンジも全部映しました。お客さんにはそれもショーなんだから」 子どもたちの大歓声が映像に残っている。人気をどう受け止めていたのか。 「子ども向けに作っていたのかなと思うでしょ? そうじゃないです。子ども向けに作ったら、子どもに馬鹿にされます。大人向けに作って、大人にウケれば、子どもにもウケる。とはいえやっぱり、子どもは理屈抜きでバーンと笑ってくれる。大人になると、『うんこ……?』ってちょっと考えてしまうところがありますよね」