JR東海は否定せず、新幹線「静岡空港駅」の可能性 鈴木新知事、リニア「県にメリットを」発言受け
そして、ロイヤルエクスプレスの静岡県内運行はJR東海にとってさらに大きな意味を持つ。川勝前知事は「工事を認めるためには静岡県へのメリットが必要だ」と再三、主張していたからだ。この列車の運行は「静岡県へのメリット」なのか。丹羽社長にこの点を尋ねると、「経緯については先ほど話したとおり」と、工事との関連性を明確に否定した。しかし、一方で、丹羽社長は「静岡県の魅力を多くのみなさまに知っていただく機会になる」と話しており、静岡県にメリットがあるプロジェクトなのは間違いない。
■新幹線空港駅「受け止めて対話する」 もっとも、川勝前知事が期待していたメリットとは、もっとスケールの大きな話だ。神奈川、長野、岐阜。リニアが走るほかの県にはJR東海が中間駅を設置する。これらの県ではリニア開業を契機とした街づくり計画が動き出しており、大きな経済効果が期待される。それに比べると、リニアのルートが県北部の南アルプス地中深くをかすめるだけの静岡では駅設置が考慮されることはなかった。 代わりに前知事が要望したのは富士山静岡空港の近くに東海道新幹線の新駅を設置することだ。リニアの駅ができないなら、代わりに東海道新幹線の駅を造ってほしい。東海道新幹線は空港の地下を走っている。新駅が設置されれば空港と新幹線がダイレクトに結ばれ、首都圏や中京圏と短時間でアクセスできるようになる。
JR東海が新駅の位置は隣駅に近い、地形上も厳しいといった理由から否定的な見解を示すと、川勝前知事は新駅に代わる別のメリットを要求した。「静岡には駅を造らないのだから、各県の駅建設費の平均くらいの費用が必要だ」。リニア中間駅の建設費用は800億円程度と推計されているが、さすがに金銭の話を持ち出すのは露骨すぎると考えたのか、後になってメリットの話は撤回し、水資源や生物生態系に論点を絞っている。 これに対して、JR東海はリニア開業後の東海道新幹線はダイヤに余裕ができ、静岡県内の停車本数を増やせることが利便性の拡大になることが静岡県へのメリットだと考えていた。国土交通省はその経済効果は10年間で1679億円と試算している。前知事は「新幹線の停車本数増は歓迎する」としたものの、着工反対の姿勢は変えなかった。