「開発費」は楽しさに比例しない ポルシェ911 ノーブルM12 TVRタスカン 6気筒スポーツ比較(1)
グループCマシンを彷彿とさせるM12
少量生産のスポーツカー・メーカーは、往々にして資金不足の状態にある。最高のドライビング体験を生み出すことと、年度末の収支報告との狭間で苦悶しているのが常だ。加えて、リー・ノーブル氏は中途半端なことを許さない。 【写真】ミレニアムの6気筒スポーツ ポルシェ911 ノーブルM12 TVRタスカン 最新モデルも (145枚) 英国のスポーツカー・メーカー、ノーブルは、M12 GTOシリーズの大成功で出資者の期待に応えてみせた。彼がミドシップ・スポーツカーの草案を温め始めたのは、1980年代初頭。まだ、アルティマ・スポーツ社の時代だった。 ノーブル・オートモーティブ社を創業したのは、1998年。「広告を出稿する予算はありませんでした。マスコミに頼る以外、手段はありませんでしたね」。とリーが25年ほど前を振り返る。 M12の前身となる、M10 ロードスターへ試乗したAUTOCARは、その仕上がりを絶賛した。「これまで運転してきたミドシップの英国製2シーターの中で、最も完成度が高く、エキサイティングな1台です」。と伝え、市場の関心向上へひと役買った。 2000年に発表されたのが、スタイリングとパフォーマンスを磨いたM12 GTO。シャシーはM10の派生版で、ロールケージが一体になったスチール製スペースフレームに、接着剤とリベットで合金製パネルが組まれていた。 それを覆う大胆なボディは、グラスファイバー製。ル・マン24時間レースを走る、グループCマシンを彷彿とさせた。 サスペンションはダブルウイッシュボーン式で、ダンパーはコニ社製の車高調整式。入念なセットアップにより、優れた姿勢制御と操縦性、路面への追従性を叶えていた。
リアにダース・ベイダーがいる
パワーユニットも、当然アップデート。フォード・デュラテックと呼ばれるオールアルミ製の2.5L V型6気筒ユニットは先進的な設計で、各国での認証も済んでおり、賢明なチョイスになった。 これに、ギャレット社製のT25型ターボチャージャーを2基ドッキング。インタークーラーも挟み、ノーブルは314psの最高出力を引き出した。その結果、0-161km/h加速時間は、当時の同クラスのフェラーリに並んでいる。 ターボの悲鳴も、特徴の1つになった。BBCの人気番組、トップギアで試乗したジェレミー・クラークソン氏は、これを聞いてリアにダース・ベイダーがいる、とジョークを飛ばしている。 M12は、製造工程の殆どが南アフリカのハイテク・オートモーティブ社で済まされた。ノーブルの英国バーウェル工場では、パワートレインが組み付けられる程度だったが、4万4950ポンドという現実的な英国価格が、力強く販売を牽引した。 今回ご登場願ったのは、2003年に追加されたM12 GTO-3R。約5000ポンドの価格上昇と引き換えに、最高出力は357psへ強化され、クワイフ社製トルクベクタリング・デフに6速MTが組まれている。同時期のTVRタスカンやポルシェ911より、お手頃だった。