「ファクトチェックを担う団体の透明性をどう確保するのか」総務省検討会の座長・宍戸教授に聞く(後編)
監査委員会が1度も開かれていないのにJFCのガバナンスが機能しているといえるのか
―――ただ、JFCの監査委員会は、2022年のJFC設立以来、一度も開かれていません。監査委員もセーファーインターネット協会側の規定では定員3人ですが、宍戸先生しか就任していません。 宍戸:監査委員のメンバーを揃えて監査委員会を早く立ち上げてくれということは、セーファーインターネット協会にこれまでも強く言ってきました。監査委員会は、本来は少なくとも年に1回は開催すべきです。 監査委員会は、編集部および運営委員会がやってきたこと、財務、国との関係、それから何よりも出資者との関係、あるいはセーファーインターネット協会とその一部門であるJFCの関係が適正か、節度のある適正な分離、あるいは適正な連携ができているかをチェックし、必要な勧告や助言をするのが役目です。少なくともステークホルダーに対して、JFCがきちんとした発信をするお手伝いをする責任があります。
「JFC活動のステークホルダーは官の検討会と連携、融合型の世界」
――現状では監査委員会の委員の選任すらできていないわけですから、ガバナンスが機能しているとは言えないと感じます。 宍戸:それは、私も含めてセーファーインターネット協会側が批判を受けるべきだと思います。JFCのガバナンス全体をしっかり機能させるための重要な要素が監査委員会の活動で、それは早めに立ち上げなければなりません。だから、監査委員会ができていない以上、この取材や政府のヒアリングも含めて、いろいろなところでディスクロージャーを強化する必要もあります。先ほど言ったように、JFCの活動に関与するステークホルダーは、官の検討会と完全に分離独立しているのではなく、ある種の連携、融合型の世界です。だからこそ、透明性を高めて批判を受ける必要は大きいわけです。 本来であれば、監査委員会はJFCの活動開始からすぐに立ち上げるか、あるいは3カ月、半年ぐらいで立ち上げなければならないのに、早くやらないから批判を受ける。それでも、JFCのファクトチェックについては、監査委員会とは別組織になりますが、運営委員会で判断しているので、監査委員会の立ち上げは遅いですが、ギリギリ許容範囲だろうと思っています。 ――なぜ、監査委員会の立ち上げができていないのでしょうか。 宍戸:少なくとも私以外の監査委員には、総務省の検討会やJFCの設立の経緯とは距離があった人、少なくともそれに直接関わっておらず、かつ、ファクトチェックの問題について的確な判断ができる人、外部の人々が聞いて「おっ」と思うような人を入れるべきだと思います。でも、なかなか引き受け手が見当たらない。「監査委員にはこういう人がいい」ということは、外部からのご推薦をいただきたいくらいです。 先ほども言ったように、情報通信分野の制度に関して研究者らが少ないので、官民の研究会などの委員を頼む人が、いつも同じになってしまうんです。「人が少ない」というこの問題は、なんとかしないといけない。だから私は、総務省や民間の検討会も、できるだけ若く、かつ多様な分野・背景の人に入ってもらうよう、申し上げています。