日本各地のお酒とブランド牛を堪能する“テロワール”旅【進化する幸せ産業】
ミネラル豊富な牧草をはみ
柔らかな肉質になった壱岐牛
九州出張の帰りに、ちょっと寄り道して長崎の壱岐島にも立ち寄った。博多港から高速船で約1時間、唐津港から1時間40分ちょっとの壱岐島は、意外とアクセスがいい。。壱岐で仕込まれた麦焼酎は、大麦と米麹を2:1の割合で使用。島には7軒の酒蔵があり、貯蔵熟成酒が多いことも特徴だ。麦の香ばしさと麹の甘味が絡み合い、樽でまろやかに熟成された壱岐焼酎に合わせたいのは、もちろん壱岐牛。育てる肥育農家や飼料も指定されているなど、厳しい基準をクリアした和牛のみが壱岐牛と呼ばれる。島内の飲食店では、ステーキや焼き肉はもちろん、ハンバーグやハンバーガーなど気軽に食べられるメニューも多く、食べ比べるのも楽しい。
壱岐では自転車を借りて各港を回ってみたのだが、途中に壱岐牛を育てる牧場などもあり、島の風土を感じられた。海からの潮風を浴びた牧草はミネラルを多く含み、そのミネラルが壱岐牛の肉質を柔らかくするのだそうだ。実際に島内を自転車で巡ってみると、潮風を受け、エメラルドグリーンの海に囲まれた、恵まれた環境であることを実感する。“自給自足できる島”、と呼ばれるのも納得だ。
島を訪れたからこその楽しい時間は、地元のスーパーマーケット巡り。ウニや寒ブリ、イカやクエなどの海の幸でも知られる壱岐だが、当たり前のように壱岐牛のパックが精肉コーナーに並んでいた。しゃぶしゃぶ用の肩ロースやハンバーグなどを購入し、調理してみたところ、旨味がしっかりしているので、焼くだけで一流シェフの味になり、壱岐牛の底力を感じた。
広島の地酒と希少な比婆牛を
肉割烹の端正な和食で
広島県の比婆牛と東広島市西条の日本酒のマリアージュも見事だった。比婆牛は年間出荷頭数が200頭前後と少なく、首都圏で流通がほとんどない。県の北東に位置する庄原市でしか出会えない希少価値のある牛として、広島県内でも希少とされている。庄原市は古くからたたら製鉄産業が盛んだった。そのため木材運搬で活躍する強い牛が育ったという歴史がある。