【高校入試2025えひめ】存在感増す私立高校 新田、済美 特色選抜の影響は? 東進スクール分析
年の瀬とともに高校入試が近づいてきた。受験生にとっては志望校選びが大詰めとなり、周囲も含め緊張感が高まる時期だ。 大学進学を見据えた場合、県内での高校選択は、一部私立を除き県立普通科志向が強かったが、近年は私立高校の存在感が増している。国の授業料支援充実もあり、入試事情に詳しい教育関係者からは「私学志向が高まっている」との声も聞こえてくる。 そんな中、2025年度入試から、県立の推薦入試が廃止となり、代わりに「特色入学者選抜」が導入される。その影響がどう出るのかも気になるところ。そこで、最新情報や見通しを学習塾の東進スクールに、また大学進学実績を伸ばしている松山市内の私立2校の校長に、進学強化への対応や学校の特色、特色選抜の影響などを聞いた。 ◆私立高在籍生徒が増加 「もともと愛媛は保守的で県立志向が強く、さらに『大学進学を考えると、県立の普通科を選ぶ』という保護者の固定観念があったが、今や私立高も選ばれる時代になってきた」 東進スクール第2ブロックの佐々木雄一ブロック長は、そう読み解く。「済美や新田などの私立は、各学校の特色や文化を大切にしながら、進学強化など時代に合わせた改革をしている」と説明する。 そこで各校の改革、そしてカラーを探ってみた。 ◆文武両道を掲げる新田高校 県内随一の生徒数1800人を有する新田高校(松山市山西町)。長らく「スポーツの新田」で知られた私学の雄は、難関国公立大の進学にも力を入れ、現在「文武両道の新田」を掲げている。 <進学強化 部活も両立> 「転機は15年前です」。就任2年目の和田真志校長は図を示して説明する。 2009年、普通科を「スーパー特別進学コース(SS)」「特別進学コース(S)」「総合進学コース」に分けた。特進の生徒は部活動をせず勉強に専念するという位置づけだったが、13年には部活との両立体制とし、20年には特進を各2クラスに増やした。 「特進クラスは勉強も運動も頑張る子が多く、6割が部活組。インターハイに出た生徒もおり、例えば、学力についても松山東の生徒とも遜色ないと感じる」和田校長は前任校と比較し目を丸くする。 最新の実績では、国公立大合格者はSSで70%、Sで45%を占めた。直近3年間では他コースも含め合格者は53人~84人。 <デジタル人材育成に力> 県立の特色選抜を意識した対応として、新田は新たな推薦制度「デジタルチャレンジ入試」を新設した。従来の学業特待生、体育奨学生に次ぐ第3の推薦の柱といえる。 「『私学の力を地域の力に』をテーマに、県内私立大などと高大連携に取り組んでいるが、デジタル人材育成は重要な課題。パソコンやゲームに関心があり、我こそは、という中学3年生はぜひ!」とアピールする。 ◆30年前から着々「進学の済美」 生徒数2番目の約1600人の済美高校(松山市湊町7丁目)。永井康博校長は「私立は魅力をつくるためにもがいている。少子化で県立高校に入りやすくなっている今、選んでもらえる学校にしなければ」と強い口調で語る。 <進学強化 安定した実績を重視> 新田と同様、スポーツに力を入れる生徒が多いのが特長だが、近年は進学実績を着実に伸ばしている。永井校長によると、四年制度大学への進学に力を入れ始めたのは約30年前。 現在、四年生大学を目指す特進コースは、1年次でプレミア、エクセレント、スタンダード、国際、スポーツ科学と多彩。特に2年前に設置した特進プレミアコース(約30人)は、「トップレベルの学力集団を作り『進学の済美』を進化させる」と紹介されている。 過去3年の国公立大合格実績は22年125人、23年88人、24年71人。 「超難関国立大の合格も大事だが、保護者のニーズは愛媛大や、近隣の岡山大、広島大あたりが多い。安定した進学実績を積み上げていきたい」との方針だ。 <中心部立地の魅力 新校舎建設も> 現在、本館校舎の老朽化に伴い建て替え工事が進んでいる。「耐震補強ではなく、生徒の命を守ることを一番に考えた。あわせてICTに対応した施設充実を図る」とする。戦後のベビーブームで建設された旧校舎にはコンセントがない教室もあったという。7階建てと6階建ての2棟を合わせた新校舎は来年3月に完成予定。 「地域の期待にこたえ、地域の子どもを大事に育てる、スポーツでも勉強でも、頑張る生徒を応援する」と永井校長は力を込めた。 ◆私立が受け皿に 「愛媛の場合、県立は中1からの調査点(内申点)が重視され、3年になって成績を上げても間に合わないことがある。学力はあっても1、2年時の内申がよくないという生徒に対して、進学強化の私立が受け皿になる」と東進スクールの佐々木ブロック長はみる。 さらに導入元年となる特色選抜については「希望する生徒が多いと聞いている。一般入試より先に進学先を決めたい、早期に決着を、という流れがあるのかもしれない」と分析。さらに「そこに私立の推薦も選択肢として加わるような時代になってくるのではないか。30代後半から40代の親世代は、第一志望は県立、滑り止めは私立という価値観がテンプレートになっているが、それが変わっていくのではないか」と話す。
愛媛新聞社