イスラエルのガザ攻撃は「戦争犯罪」ではないのか?
6月に始まったイスラエルのガザ攻撃によってパレスチナ人約2000名が死亡しました。その内の多くは女性であり子どもです。つまり非戦闘員です。また負傷者も1万名に達しています。しかもガザに生活する180万人の内の4分の1が住居を破壊されて難民化しています。その上、人々の生活を支える発電所、病院、学校、モスク、海水淡水化工場なども被害を受けています。 【図解】中東情勢 複雑に絡み合う対立の構図を整理
国連事務総長「受け入れがたい」
戦争時における非戦闘員の保護などを決めた1949年のジュネーブ条約に違反している疑いが濃厚です。イスラエルに抵抗するガザの武装勢力が人口密集地に軍事拠点を設置してロケットを発射するなど民間人を人質としているという実態は一部には存在します。しかし、非戦闘員の被害の大きさに照らして判断すると、イスラエルの攻撃は、バランスを欠いており、戦争犯罪を構成する意見が強いのです。イスラエルでの民間人の死者3人に対しガザでの2千名の死者というのは、いかにも過剰な攻撃ではないかと見られているのです。 たとえば国連の潘基文事務総長は、多くのパレスチナ人が避難していた国連の学校への攻撃を「受け容れ難い」と表現しました。また国連の人権理事会が7月にイスラエルを非難し調査委員会を現地に派遣する決議を、賛成多数で可決しています。これに基づいて調査委員会が結成されました。一方ではイスラエルが受け入れを拒否する方針です。他方ではガザを支配するハマスは受け入れを表明しています。 いくら非難したところで、実際にイスラエルの指導者を拘束して裁判にかける力は、国連にはありません。
これまで「戦争犯罪」に問われた例
これまで裁判で戦争犯罪に問われた例としては第二次世界大戦後のドイツや日本の指導層、そして旧ユーゴスラビア内戦の際の蛮行の責任を問われたセルビアの指導者のミロシェビッチなどがいます。しかし、ドイツや日本の指導者たちは、戦争に敗れ占領下で拘束され裁判にかけられました。ミロシェビッチは、欧米の経済的圧力を受けてセルビアが裁判所に引き渡しました。 イスラエルは占領下にはありません。いくら戦争犯罪を告発したところで、裁判にかける力は国連にはありません。しかし、戦争犯罪に問う動きは、イスラエルの孤立感を深め圧力となっています。その証拠にイスラエルのネタニヤフ首相は国際的な圧力には屈しないと表明しています。圧力に屈しないとの発言それ自体が圧力を感じている証拠ではないでしょうか。 (高橋和夫・放送大学教授)