「よくわからない解雇理由」で社員を解雇したブラック企業に対して「裁判官が放った第一声」
過去最高の売上でもリストラ
次も解雇の有効性を争った事案である。依頼人の勤める会社は、業績不振を理由に人員整理をし、依頼人にも強烈に退職勧奨をしてきた。そんななか、会社の業績は突如大幅に改善した。アベノミクスの影響である。製造業にとって、アベノミクスによる円安は莫大な為替差益をもたらした。相手方はその恩恵にあずかり、業績は絶好調になった。なんと過去最高の売上を記録したのである。 しかし……一度振り上げた拳を下ろせないのか、会社は退職勧奨を止めず、ついには整理解雇を強行するに至った。 整理解雇というのは業績不振のときに行われるもので、労働者には何の非も無いから、その有効性は極めて厳しく判断される。大前提として整理解雇の「必要性」が無くてはならない。しかし、過去最高売上を記録した会社について整理解雇の必要性が認められる余地など無い。この解雇を有効と判断する裁判官はいないだろう。相手方の弁護士も会社を説得したと思われるが、結局裁判になってしまった。 こういう場合、さっさと解雇を撤回するか、労働者が納得する解決金を支払って合意退職してもらうのがもっとも合理的な判断である。しかし、会社はいずれの道も選ばず、結局1審は和解ではなく判決となった。もちろんこちらの勝訴。2審ではこちらの納得する水準で和解が成立し、事件は終わった。 かなり長引いたので、弁護士費用も相当かさんだと思う(相手方の弁護士はとってもお値段の高い法律事務所の人たちだった)。 経営者の方々には、長い目で考えて合理的判断を下していただきたいものである。
明石 順平(弁護士)