【高校野球】履正社が大阪を制し近畿大会へ 下馬評を覆した「大阪桐蔭対策」とは?
準々決勝まで「3番・ライト」で出場していた主将の濱内太陽を、高校1年の練習試合以来というマウンドへ送ったのだ。その濱内は誰もが驚く好投を見せ、9回二死走者なしと、勝利まであと一歩と迫っていた。ところが、そこから王者・大阪桐蔭が底力を見せ、大逆転勝利。当時を知る百武は、"第二の濱内"を探したくなる気分になっていたのかもしれない。それほど前評判は、大阪桐蔭優勢だった。 大阪桐蔭の投手陣は、前チームで春夏甲子園を経験している中野大虎、森陽樹が健在。野手陣もセンターライン、上位打線に甲子園経験者が揃い、新主将の中野を中心にまとまりのよさも伝わってくる。 対する履正社の投手陣は、背番号1の古川拓磨、本職はセカンドで172センチの下手投げ・辻琉沙(りゅうさ)、そして本職ショートの167センチのリリーバー・矢野塁の3人が中心。 野手陣も例年に比べるとやや小粒で、多田晃監督の特徴である足を絡めた攻めは健在だが、「前のチームと比べたら......」といった印象だ。個々の力に目を向けると、やはり大阪桐蔭のほうが一枚も二枚も上のように思えた。 【履正社が実践した大阪桐蔭対策】 迎えた決勝戦、履正社の先発マウンドを託されたのは、準々決勝(上宮太子戦)でも先発した下手投げの辻だった。この日の大阪桐蔭のスタメンには、左打者が6人。一般的に右の下手投げは左打者を苦手にしているが、オーソドックスな右のオーバーハンドである古川と天秤にかけると、辻の先発は妥当なところだった。 というのも、大阪桐蔭と対戦するチームは、左腕、軟投派、変則といった投手起用が定石のようになりつつある。もっともこれは大阪桐蔭に限らず、強力打線をウリにしているチームが沈黙する時は、得てしてこのようなタイプにハマることが多い。履正社ベンチも下手投げの辻に、大阪桐蔭打線がハマってくれることを期待したのだ。 結果、辻はしっかりと試合をつくった。ボールは決して速くないが、適度な荒れ球もプラスに働き、そこへ中学時代は矢野とともにU-15の日本代表でもプレーした経験と度胸のよさも生きたのだろう。