日々新鮮に、一年生に戻って稽古ができる幸せ(舞踊歴70年を越えてなお表現を深める日本バレエ界のパイオニア 松山バレエ団プリマバレリーナ・森下洋子)第5回/全5回
バレエ歴70年を超え、今なお舞台に立ち続ける、日本人のバレエの可能性を世界に広げる先駆けとなったプリマバレリーナの森下洋子さん。3歳からバレエをはじめ、すぐに夢中になり「一生続ける」と決め、一度も迷うことなくバレエ一筋に歩んできた。“天才少女”と呼ばれた少女時代、また、日本人のバレエの可能性を広げる活躍をつづけ、長きに亘り高いクオリティのパフォーマンスを発揮し続けるのは並大抵のことではない。舞踊歴70年を超えた今も、舞台に立ち続ける森下さんだが、ストイックな食生活やダイエットとは無縁という。これまでどのようなものを食べ、心身を磨いてきたのか。“食”を通じて森下さんの人生を辿った。
踊ることは生きること 呼吸するくらい自然なこと
松山バレエ団の団長になっても、森下さんは舞踊歴を更新し続けている。一日に原則5、6時間をレッスンに当てる。オフ日もストレッチは欠かさない。森下さんがよく口にする言葉がある。「稽古は1日休むと自分に分かる。2日休むと仲間に分かる。3日休むとお客様に分かる」。 日本バレエ界をリードし、毎日欠かさず稽古を続けている人の言葉は重い。そして、バレエは、技術を磨くことだけではないという。 「バレエは技術も大切ですが、それだけでは心深い感動をお届けすることはできません。多くの方に夢や希望をお届けする、という強い思いをもって毎日コツコツと稽古を続け、魂を磨いていくことが大切だと思っています。バレエは、すぐにできるようにはなりません。長い時間がかかるもので、私自身は10年、20年の長いスパンで考えて稽古を繰り返しています。今、舞踊歴70年を越えてなお、新しい発見があり、新しい音が聞こえてくる。バレエには終わりがない、そこがバレエの素晴らしさです。 次の日もきちんとレッスンできるように、その日のうちに身体のケアとマッサージは怠らず、「発熱すると筋肉が落ちてしまうから」と風邪の引き始めには、すぐ医師の処方を受ける。ケガにも細心の注意を払っており、特に雨の日や雪の日などの足元が滑りやすい日の歩行にはとても気を遣っているという。
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