その影響力も「今は昔」…視聴率「81.4%」を記録した60年代『NHK紅白歌合戦』とその裏番組
日韓スターたちが大集合したYOASOBI『アイドル』
そして、ジャニーズが消えた代わりに、YOASOBI『アイドル』の演出には韓流や坂道系のアイドルが勢ぞろいしていた。 『推しの子』というアイドル「業界」アニメの主題歌としてヒットしたのだが、「大衆に消費されていく偶像」への風刺や寓意の強い歌詞に合わせて、生身のアイドルたちが次々と現れる人間見本市のような豪華演出には苦笑いしてしまった。 確かに、別格扱いを要求していたジャニーズ系アイドルが不在だからこそ可能な演出で、良かれと思ってやったのだろうし、YOASOBI自体が、アニメ、漫画、アイドルなどのサブカルチャーを過剰に消費して生きている世代の焦燥感の代弁者として売れたから、当然の演出でもあるが、正直、グロテスクでもあった。 自虐的に開き直った歌詞が消費するファンの免罪符として機能するアイドルソングはいくつもあるし、そういう捻じくれた自傷行為の上に成り立っているのが日本のアイドル文化なのだが。 そうでもしなければこんな国で生きていられるか、と言わんばかりに。 結局、テレビを観る若年層は深夜アニメかジャニーズ以外のアイドルのファンくらいになってしまったのだが、YOASOBI『アイドル』の演出はその構図をあからさまに体現していた。 アーティスト系やバンド系の多くは連続ドラマの主題歌よりも、ANIPLEXなどのアニメ主題歌で売れているから、30日のTBS『日本レコード大賞』でも舞台演出でアニメを流すパターンが目立っていた。アーティストの姿より『呪術廻戦』や『チェンソーマン』のほうが目立つのはどうかと思うが。 そして、我が家で『NHK紅白歌合戦』を観ていたのは筆者だけだった。『年忘れにっぽんの歌』『孤独のグルメ』のテレビ東京を見ていた両親からは「まだ紅白なんて見ているのか」と笑われたが、別に見たくて見ているわけではない。 良くも悪くもこの一年の芸能界やテレビ業界の動向が集約されている番組なので、コラムのネタ拾いも兼ねて見ていたのだ。しかし、そんな動機がないと、もはや見る理由もない番組であることも事実だ。いつの間にこうなってしまったのか? かくして、今回は『NHK紅白歌合戦』が本当に圧倒的だった時代の「裏番組の歴史」を掘り下げてみたい。