頼清徳新政権への「懲罰」…!? 中国人民解放軍&海警局による本気すぎる「大規模軍事演習」の狙いは何なのか
中国の官製メディアはどう解説したか
前述の『解放日報』は、具体的な演習の内容についても説明している。 〈 本日午前7時45分に開始。東部戦区は台湾海峡、台湾島北部、南部、東部及び金門島、馬祖島、烏丘嶼、東引島周辺で、合同の演習と訓練を展開する。 東部戦区の合同作戦指揮センターは、行動の指令を下した後、戦区の海軍の多くの駆逐艦、護衛艦は編隊を組んで、台湾島周辺の海域の多くの方向に高速で機動していく。各艦艇は計画に則って目標とする海域に到達した後、迅速に戦闘配備を展開する。主砲と副砲、ミサイルなど武器システムの打撃準備を随時行う。艦艇の編隊は多元情報及び海空の当面の態勢を融合させ、目標を定めて迅速に捕獲する。多くの型の武器を展開し、多くの立体的な飽和式の模擬打撃を行う。 台湾島南部の海空域では、駆逐艦と護衛艦の編隊及び対潜哨戒機が一体となって、また艦載対潜ヘリコプターも同時に上空を飛び、各艦艇と航空機が密接に融合し、曳航式ソナーの配備やブイの進水などの手法を総合的に活用する。それによって「敵」の潜水艦や艦艇を活動地域から全面的に一掃し、命令に従って水中の目標に対して模擬攻撃を実行する。 「離陸時刻!」――東部戦区空軍の数十機の戦闘機は一体となって出動し、台湾島周辺の哨戒と離島を囲む巡航を行う。任務の空域に到達すると、各種の戦闘機は合同の情報を支柱とし、臨機応変に各種の戦術行動を取りながら、台湾島周辺の哨戒に近づいていく。空軍の多くの編隊は実弾を搭載しており、予定の空域を飛行して多くの打撃陣地を打ち立てる。そして駆逐艦、護衛艦、ミサイル拘束ボートと連携し、「敵」の高価値軍事目標や監視哨戒機への攻撃をシミュレートする。 某航空旅団の黄凱パイロットは述べる。「風雨が吹き荒れるなど気象が複雑であっても、われわれは命令を受ければ、すぐに飛び立つ。そして多くの項目、高強度の連続作戦を実施し、実戦能力を全面的に引き上げていく。戦闘機のパイロットとして、命令一つ下りれば、われわれはいつでも飛び立ち作戦を実行。共産党と国民が付与した使命、任務を決然と遂行する」 同時に、陸軍とロケット軍部隊は命令に従い、予定地域に進入し、各部隊は迅速に発射陣地を占領。発射準備を行い、海空と共同で突撃態勢を築き、合同で打撃などの項目の演習訓練を行う。 本日の演習訓練は、東部戦区の合同作戦システムの管轄下で、戦区の部隊を台湾島北部、南部の空海域に配置。海上で突撃し、陸地で打撃を与え、防空や潜水艇の哨戒などの項目の訓練を行い、一層多くの部隊と協同で、合同打撃などの実戦能力を検測ものである 〉 以上である。 中国の官製メディアで、今回の軍事演習の解説役を担っているのが、国防大学の張弛(ちょう・し)教授である。張教授は中国共産党の国際紙『環球時報』(23日付)で、次のように解説した。 「人民解放軍の台湾海峡周辺での演習は、すでに一種の『新常態』だ。この常態化した演習は、『台湾独立』勢力に毎度、中国大陸のボトムラインとレッドラインの矯正と懲戒を突きさすものだ。 頼清徳の5月20日の演説は、一篇の『台湾独立』の告白と言ってよい。民進党当局が、『台湾独立』の危険な道の上を遠くまで進んでいくと表明したもので、今後4年間の『台湾独立』のリスクはさらに高まった。 火を弄(もてあそ)べば、必ず自分に焚きつく。もしも民進党当局が『台湾独立』の危険な道の上を勝手に独歩していくなら、最終的には岩を自己の脚に落とすだけのことだ。 昨年、蔡英文がアメリカをうろついた後、解放軍は台湾島を取り囲む戦争準備パトロールの『連合利剣』演習を行った。今回の頼清徳の演説の後、解放軍は再度、『連合利剣』演習を行った。つまり『台湾独立』の分裂勢力が一回挑発するたびに、解放軍は一歩前へ出る。これこそはまさに、『反サラミ戦術』の新常態なのだ。 東部戦区が発表した演習解説図によれば、演習地域は明確に台湾島の周辺を示しており、台湾包囲網を築くのは一目瞭然だ。北部、南部、東部の3方向の海空域を合同で打撃する演習としているのは、解放軍が多くの方向から台湾の港、空港などの重要目標に対して抑止と打撃を与えるためだ。 まず台湾島の北部での演習は、『台湾独立』の悪行への抑止だけでなく、民進党当局に対する打撃だ。次に解放軍の台湾島南部での演習は、すなわち政治的な『台湾独立』勢力への痛撃から、台湾島の経済的な封鎖を行うということだ。軍事的に台湾軍を港湾の中に封じ込めることは、『台湾独立』勢力の『武力で独立を謀る』という幻想に対する有力な激震となる。 解放軍が台湾島の東部を演習地域に画定させたことの意味もはっきりしている。すなわち、3つのラインを阻むことだ。すなわち、台湾のエネルギー輸入の生命線を断つ、『台湾独立』勢力が制裁を逃避して外に逃げるラインを断つ、アメリカ及び盟友が『台湾独立』勢力に援助を提供する支援ラインを断つということだ。 『台湾独立』勢力は、解放軍が台湾海峡周辺で演習を行うのが新常態であるばかりか、不断に突き進んでいくことを思い知るべきだ。まずは台湾島の外島である烏丘嶼と東引島の地理的な位置は非常に重要だ。それは台湾海峡の交通の要所の調査であり、意図ははっきりしている。頼清徳当局の行動を警告しているのだ。『台湾独立』は、死に至る一方通行にすぎないのだ」 以上である。前半部分で「反サラミ戦術」を説いている。これは、まるでサラミを薄切りにしていくように徐々に「台湾独立」に向かう民進党政権に対抗して、徐々に台湾に圧力をかける戦術を取るということだ。 後半部分では、北側・南側・東側と3方を囲む意味について説明している。特に今回、東側から、台湾有事の際の「臨時首都」になると思われる花蓮を抑え込む大胆な作戦を取った。花蓮は、4月3日の大地震の震源地となった都市だが、ここを封鎖されると、確かにアメリカからの救援を受けにくくなる。