パリ五輪の卓球で打倒・中国を目指す、日本女子の「最後の一手」を考える
一方で、中国と日本のダブルスの完成度には大きな開きがある印象だ。中国は東京五輪でも起用された陳夢・王曼昱のペアが国際大会に出場することが多く、6月11日付の世界ランキングではシン・ユビン、チョン・ジヒ(韓国)のペアを上回って1位。女子ダブルスでは中国、韓国ペアがトップ争いを繰り広げており、日本チームは対抗できていない。 日本は今年に入ってから、平野・張本ペア(世界ランキング55位)が国際大会を戦っており、2月にパリ五輪メンバーが正式に発表されてからは「シンガポールスマッシュ」や「サウジスマッシュ」といった大会に参戦した。 だが、シンガポールではインドペアの不規則な回転に苦戦を強いられて初戦敗退。さらにサウジアラビアでは、オーストラリアと香港の選手による国際ペアにまたも1回戦で敗れた。 本大会までにどれだけ連携を深められるかが注目されるが、戦略面では別の選択肢も考えられるかもしれない。 女子メンバーの中で唯一サウスポーの早田は、伊藤美誠と組んで全日本選手権5連覇の実績を持つなど、ダブルスが得意な選手。どちらも右利きの中国ペアに対して、左・右のペアが組めるのは日本のアドバンテージでもある。 ただ、個人として世界トップ5入りした早田は、団体戦のシングルス4試合のうち、2試合を担うことが濃厚。さらに、男子の張本智和と組んで混合ダブルスにも出場するため、団体戦でのダブルス起用は準備面で負担がかかる懸念がある。 しかし平野と張本が、シングルスで孫穎莎も含めた中国勢といい戦いができるようになってきていること、早田がふたりとペアを組んだ経験もあることを考えると、最後の一手として「ダブルス早田」という選択をする可能性もありうるかもしれない。 早田、平野、張本と平均年齢が若く、かつ総合力の高いチームで悲願の五輪金メダルが期待される中、シングルス、ダブルス共に乗り越えなくてはいけない中国との差をどのように埋めていくのか。決戦のときが迫り来る。 取材・文/井本佳孝 写真/アフロ