「セクシー田中さん」報告書に批判殺到の根本原因 日テレ、小学館の報告書で当事者の証言が相違
ただし小説の『藪の中』とは違い、それぞれの立場で弁護士が委託を受けて調査された報告書を読み解くと、徐々に何が起きていたかがわかるように作られています。ふたつの報告書からわかる問題の構造を異なる3つの視点でまとめてみたいと思います。 先に申し上げておきますと、本記事は前後編の構成で、前編で語られる原作者の視点のストーリーは、後編の別のふたつの視点でのストーリーを通じて事件の様相を変えていきます。 ■①原作者の視点
小学館の報告書では担当編集者の証言から原作者の視点で何が起きていたのかが詳述されています。 日テレからドラマ化の依頼があり、小学館の編集者と日テレのプロデューサーが最初に顔合わせをしたのが2023年3月9日でした。その際、編集者は過去の映像化の経験から「原作者が自分の作品を大切にする方であり、作品の世界観を守るために細かな指示をする」ことを伝えています。 ちなみに漫画原作のドラマ化においては過去、『おせん』や『いいひと。』などの作品で「原作レイプ」と非難されるほどの大幅な改変が行われてきたことが問題視されています。
この後に起きる事態を見ると『セクシー田中さん』については原作の世界観を大事にするという認識は小学館、日テレ双方で共有されています。原作に沿ったストーリーでドラマ化が進む中、事態は細部のこだわりで発生します。 さて報告書によれば最初の掛け違いは4月、日テレから脚本になる前のプロットが送られてきたところから始まります。 原作をもとにしたドラマが作られる過程では、ドラマ制作チームと原作者の間でラリーとよばれるやり取りが行われます。まずプロットが提示され、何回かのラリーが行われ、それがおおむね認められた段階で脚本が書かれ、そこでもラリーが行われ、第二稿、第三稿と進み、最終稿が完成します。
日テレから送られてきたドラマのプロットに対して、原作者は登場人物の性格のとらえ方について説明したり、細かい修正を伝えます。ラリーでは原作者は修正等を求める都度、その理由までをも明確に書き、編集者が日本テレビに伝える作業を繰り返しています。 ■脚本家に伝えられなかったという原作者の要望 第3話のプロットでは原作のエピソードの順番入れ替えで流れが悪くなっている点を指摘して、「田中さんの頑なな心が、朱里や笙野達との小さくて大きなエピソードを順番に積み重ねる事によって、少しづつ(原文ママ)溶かされていく様子を丁寧に描いてるつもりなんですが…」と原作中のエピソードの順番を原作に従ってほしい理由を伝えています。