好セーブ連発も一発に泣いた札幌GK児玉潤「順風満帆な人生ではなかった」給食センター勤務経て辿り着いたJ1クラブの表舞台
[8.21 天皇杯4回戦 千葉 1-0 札幌 フクアリ] 再三のビッグセーブも報われず、直接フリーキック一発に沈んだ。北海道コンサドーレ札幌GK児玉潤は0-1で敗れた天皇杯4回戦・千葉戦後、「あの1点で負けたのは重く受け止めないといけないし、GKとしてもっともっとやるべきことがたくさんある」と悔しさを口にした。 【写真】「ものすごいメンツ」…リバプール豪華3選手に囲まれたMF長野風花 試合を通してのパフォーマンスは上々だった。守備では前半19分のFW小森飛絢のヘッド、同26分のDF岡庭愁人のヘッド、同29分の小森の左足シュートをいずれも完璧な対応でセーブ。後半35分にもカウンターから大ピンチを迎えたが、1対1の状況でFW高木俊幸のシュートを阻止した。 また攻撃ではフィールドプレーヤー顔負けの配球力で前半20分間の優勢をお膳立て。徐々に相手のプレッシングが整理されてきたことで、キックがカットされる場面もあったが、後半は安定感を回復。最後はハーフウェーライン付近まで飛び出して攻撃の起点を担い、パワープレー攻勢を牽引していた。 児玉は試合後、自身の配球を「相手のプレスに対してプランをもっと明確に持たないといけなかった。後半のいい流れの時は逆にちゃんと相手のプレスを考えて配球できていた。あのくらいの余裕をもっとゲームの入りから持たないといけない」と反省まじりに振り返りつつも、度重なるシュートストップについては「セービングの部分では大きな収穫があり、これまで練習で普段意識していたことがピッチで出せたと思う」と手応えを口にした。 もっとも、失点シーンには悔いを残していた。すぐに「失点場面はまた振り返って、あの1本を止めるために日々の練習から取り組んでいきたい」と言葉を続けた。 失点は前半45分、ゴールから25m超のFKだった。千葉は左利きのDF佐々木翔悟と右利きのMF品田愛斗をキッカーに立たせてきた中、札幌は佐々木のキックを警戒した壁で対応。だが、FKを蹴ったのは品田で、それも壁のないコースに蹴ってきた。その結果、児玉は逆を突かれた。 囲み取材では報道陣から「ノーチャンスだったのではないか」という質問も向けられたが、児玉は「ノーチャンスで終わらせたら成長はない」と即答。「止められないとも思わないし、これからの取り組み次第であの1本だって止められる可能性があると思っている。そこにフォーカスしたい」と自身の責任を受け止めた。 これで2回戦・栃木シティ戦に続いて2試合のゴールマウスを守った天皇杯は終幕。今季加入の児玉にとってはJ1加入後初めて託された舞台が終わりを迎える形となった。残る大会はGK菅野孝憲が正GKに君臨しているJ1リーグ戦と、序列は未定だが、強敵との戦いが続くルヴァン杯プライムラウンドのみ。ここからのシーズンで出番を得るにはもう一段上の競争を勝ち抜くしかない。 それでもこの舞台に立った経験は今後の糧となるはずだ。 175cmとGKとしては小柄な体躯の児玉は東京Vユース、桐蔭横浜大を経て2020年にJFLの東京武蔵野シティFCに加入。社会人1年目は給食センター勤務をしながらサッカーに取り組むという生活も経験した苦労人だ。その後、当時広島県1部~中国リーグだった21~22年の福山シティFC、23年のY.S.C.C.横浜(J3)を経て、今季初めてJ1リーグに辿り着いた。 J1クラブの一員として踏みしめた天皇杯の舞台。「自分の可能性を信じなければここに辿り着くことはできなかった。自分を信じてここまで積み上げてきたものは肯定してもいいのかなと思う。順風満帆な人生ではなかったし、高校でも大学でもたくさん挫折してきたけど、でも諦めたくないという“諦めの悪さ”が、ある意味よかったと思う」と感慨も口にした。 それでもこの天皇杯で示したパフォーマンスを踏まえれば、次なるチャンスもありそうだ。遅咲き26歳のGKは「まずは今日の反省をしっかりして、先を見すぎることなく。磐田戦にも出る可能性もあるし、毎日の積み重ねが大事になる」と決意新たにトレーニングを重ねていく姿勢を見せた。