東大出身・パデル日本代表の冨中隆史が語る文武両道とデュアルキャリア。「やり切った自信が生きてくる」
文武両道を貫いた学生時代。「物理学のスポーツ」に通じる取り組み
――東京大学時代に学んだことや、合理的な考え方など学業で身につけたことがスポーツに役立っていると感じることはありますか? 冨中:パデルはスペインだと「物理学のスポーツ」と呼ばれているんです。そんなに難しい計算や物理学を使うわけではないんですが、ボールがどこに跳ねるかを考えるときに、それが感覚的に生きている部分はあります。それと、取り組み方という点では勉強も仕事もスポーツも似ている部分が多いと思っていて、特に「目標に向かって逆算して今取り組むべきことに落とし込んでいく」という部分では共通していますね。 ――東大では、主にどのようなことを学んでいたのですか? 冨中:工学部でいろいろな分野を扱っていたのですが、主にやっていたのは化学系の研究で、試薬を調合するなど、毎日研究に没頭していました。 ――それは、パデルの戦術分析などと共通するところもありそうですね。新しい戦術はどのように取り入れているのですか? 冨中:そうですね、パデルの戦術はプロの試合の映像を見て研究したりしています。「この場面ではこういうショットを打つのが有効なんだな」と、自分が知らないスキルや上達のヒントがたくさんありますから。最近はコロナ禍も明けてきて海外からもトップ選手が日本に来てくれるようになったので、試合後に「なんでそこに打ったんですか?」と質問をしたりして戦術をアップデートしています。パデルが盛んな国は日本とはプレー環境や文化も大きく違うので、そういう貴重な経験ができていることも大きいですね。 ――2020年に日本代表に選ばれて以降は世界大会にも出場していますが、パデル日本代表チームをサポートしている企業に勤めていることで、競技にどのような相乗効果があると感じますか? 冨中:会社の方から応援してもらえることや、大会の時に仕事のスケジュール面を配慮していただけることなど、環境的にはすごく恵まれています。昔は野球をやっていたので、野球と学業を両立していました。今はパデルと仕事をやっていて、そういうふうにいろいろなことを同時にやることが多いので、業務でもパデルでも限られたリソースの中でアウトプットを最大化して成果を出すことを考えて、時間の使い方を考えられるようになったと思います。