東大出身・パデル日本代表の冨中隆史が語る文武両道とデュアルキャリア。「やり切った自信が生きてくる」
スポーツと仕事で、体と頭を切り替える
――寝ている時以外は常に全力で仕事やパデルをしている感じですよね。オフはあるのですか? 冨中:意図的に作ろうとしてはいるのですが、何もしない日は1カ月に1回くらいしかないです。でも、ストレスにはなっていないですね。歩きながら仕事のことを考えたり、お風呂の中で「こういうパデルの練習をしようかな」と考えたり、基本的にはいつも何かしら考えています(笑)。2つのことをしている分、仕事の同僚に比べてリソースは限られますし、パデルを専門でやっているメンバーに比べると、練習に割ける時間が限られているので。その差を埋めるために、移動時間とか空いている時間で考えるようにしています。 ――頭と体の切り替えはどうしているんですか? 冨中:仕事では頭が疲れますけど、体は疲れないですし、逆にパデルは体が疲れますが。自分のやりたいことをやっているので精神的には楽しめています。そういうふうに、うまく切り替えながらやれています。 ――2つのキャリアを両立することで精神面ではいろいろと好影響がありそうですね。 冨中:精神面ではすごく大きいと思います。たとえば試合をしていて苦しい場面が来た時でも、これまでの経験から自分が努力してやり切った自信があるので、そういう成功体験を思い出して、生かせる部分があります。 ――忍耐強さなどは、冨中さんご自身の元々の性格的な強みもあるのでしょうか? 冨中:性格的な強みだと意識したことはあまりなかったのですが、パデルの仲間や周りの人から「つらいことも全部やりきるよね」と言ってもらうことがあります。パデルの選手は社会人として働きながらスポーツをやっている人が多いですし、やっぱりどちらかが忙しくなるとバランスを取るのに苦労することもある思うのですが、僕はどちらのアウトプットも絶対に妥協しないようにしています。
スタッフからマネージャーへ。アジアカップも迫る重要な時期
――新卒でシンプレクス株式会社への就職を選択された決め手は何だったのですか? 冨中:就活をしている時に一番重要だと考えていたのは、「20代の間に、ある程度忙しくてもいいからビジネス面で成長できる環境に身を置きたい」ということでした。なので、コンサルティング業界で仕事をしたいというこだわりがあったわけではないんです。特に業界を絞らずいろいろな業界を見させてもらった中で、一番裁量を持って働くことができて、成長できる環境だと思ったのがシンプレクスだったので、入社を決めました。 ――その後、グループ会社のXspear Consulting(クロスピア コンサルティング)に籍を移されたきっかけはなんだったのですか? 冨中:私が新卒で入ったのが2017年で、そのタイミングで2、3年規模の大きいプロジェクトに配属されたのですが、それが結局2、3年で終わらず、4年くらい同じプロジェクトをやっていたんです。それで、次は違うことをやりたいと考えて上司とも相談していた時に、ちょうどXspear Consulting(クロスピア・コンサルティング)が立ち上がるタイミングが重なり、今の早田政孝社長から「チャレンジしてみないか?」と声をかけていただいたので決断しました。 ――今どのような業務がメインなのですか? 冨中:銀行のシステム開発を担当している企業に常駐し、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス:企業や組織におけるプロジェクトを成功に導くため、部署の枠を越えて行う組織)として開発プロジェクトの支援をしています。これまでは一スタッフという立場でしたが、今は部下をつけてプロジェクトを動かしていくマネージャーのポジションに移行しつつあるタイミングで、後輩の育成もしながらクライアントに対してしっかりとしたアウトプットを出せるように日々向き合っています。パデルでもアジアカップに向けて積み上げている時なので、仕事もパデルもとても重要な時期なんです。 ――まさにステップアップの過渡期なんですね。ご家族の支えも励みになっているのでしょうか。 冨中:そうですね。1年半くらい前に結婚したのですが、基本的に仕事やパデルで家にいる時間が少ないので、妻には迷惑をかけています。しばらくはこの生活は変わらないと思うのですが、引退する時が来たら、ちゃんと家族サービスをしようと考えています。 <了>
[PROFILE] 冨中隆史(とみなか・たかふみ) 1991年11月18日生まれ、奈良県出身。シンプレクスグループのXspear Consulting(クロスピア コンサルティング)株式会社所属、パデル日本代表。東京大学工学部を卒業し、新卒でシンプレクス株式会社に就職。2017年にパデルを始め、2020年にパデル日本代表に選出される。2021年には世界大会アジア予選に出場、同年のダンロップ全日本パデル選手権で優勝。2022年には、シンプレクス・ホールディングスが一般社団法人日本パデル協会とパートナーシップを締結。相手を緻密に分析力し、柔軟に戦術を組み立てるプレースタイルが魅力。
インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]