風鈴の音、虫の音……西洋人には聞こえない? 古来から引き継がれてきた「音」を聞き分ける日本人の耳
虫の音……日本人は言語脳の「左脳」で、外国人は音楽脳の「右脳」で聞いている
夏、風鈴の音を聞くと涼しく感じ、虫の音を聞くと秋を感じる。ところが虫の音や風鈴の音を聞き分けることができるのは、日本人とポリネシア人だけだとか。 2歳でネット利用率58%…!スマホを手放せない幼児「虫にも外遊びにも興味なし」戦慄の保育現場ルポ これは“脳”の使い方の違いだと言うのは、東京医科歯科大学名誉教授の角田忠信氏の理論だ。 人間の脳は、「右脳」と「左脳」に分かれていて、右脳は音楽脳、左脳は言語脳と呼ばれる。右脳では音楽や機械音、雑音を処理する一方、左脳では人の話す声の理解など、論理的知的な処理を行う。 では、虫の音や風鈴の音をどちらの脳で処理しているかというと、日本人は「左脳」で、外国人は「右脳」なのだとか。つまり、日本人は虫の音を“声”として受け止めるけれど、外国人は“ノイズ”として処理するため、虫の音が聞こえないのではないかという。 角田教授は、こうした脳の使い方は遺伝ではなく、日本語を母国語として最初に覚えたかどうかで決まると言う。 「私は、さらに日本の文化が大きく影響していると思います」 こう言うのは、茨城キリスト教大学の穂積訓(ほづみさとし)准教授。 「万葉集でも詠われているように、日本人は古来から虫の音を聞いて季節を感じ、楽しんできました。 昆虫に触れ、親しむという文化は日本人特有のものであり、そうした文化や歴史、体験があって、日本人の耳には虫の音が『聞こえる』のだと思います。風鈴の音もおそらく同じ仕組みではないでしょうか」 ◆虫の音を聞いてα波が出るのも左脳 しかし、本当に我々日本人は虫の音を聞いて、心地いいと感じているのだろうか。それを調べたのが、穂積准教授たちの研究チームだ。 穂積准教授たちが調べたのは、鳴き声に特徴のあるスズムシ、カンタン、エンマコオロギ。これらの音を解析して、癒し効果をもたらすとされる「1/fゆらぎ」があるかどうか、リラックス状態にあるときの指標であるα波が出るかどうか測定した。 「その結果、3種ともα波は左脳のほうが多く誘発される傾向が見られました。多くの被験者は虫の音で左脳がより刺激され、かつリラックスした状態で聞いていたと思われます」 やはり日本人は左脳で虫の音を聞いているらしい。 ところで、これらの虫がどんな鳴き方をしているかというと、スズムシは「リーン、リーン、リーン、リーン」と4回鳴いて、しばらく休み、また「リーン、リーン、リーン、リーン」と鳴き始める。カンタンは「リリリリ」と休みなく鳴き、エンマコオロギは「リリリリ」と鳴いたあと「ルルルル」と少し調子が変わり、その後少し休んで、また同じように鳴き始める。