東京湾岸タワマンの交通難民を救え 都心で「舟通勤」に熱視線
東京五輪・パラリンピックの選手村の跡地に建設された大型マンション群「晴海フラッグ」(東京・中央)。平日の午前8時半ごろ、目の前に位置する晴海5丁目船着場からフェリーが出航した。 【関連画像】野村不動産が関わる通勤フェリー1階の船内(写真=稲垣 純也) 乗船客定員数44人の船内では、乗船客が思い思いの場所で過ごしている。1階は壁面に沿ったソファに腰かけて過ごせるようになっており、2階ではデッキから沿岸のビル群を一望できる。視界には東京タワーから晴海フラッグまで東京都のシンボルが飛び込んでくる。 行き先は東京港区の日の出桟橋だ。景色や風を堪能していると、あっという間に到着。かかった時間はわずか5分だ。陸路で移動する場合、車で10分以上、最寄り駅から電車を使う場合は約30分間かかることもある――。 これが、野村不動産と東京湾クルージングが5月22日から新たに開始した、晴海と日の出区間を結ぶ舟運サービス「BLUE FERRY(ブルーフェリー)」だ。観光ではなく「舟通勤」が目的のサービスであり、午前8時半から9時55分まで往復4便を運航する。運賃は500円だ。ウェブ予約可能だが、強風や雨で波の状態が悪い日は運航しないため注意が必要だ。 「まちの力を上げるためにはベイエリアの活性化が必須だ」 舟運事業に関わる野村不動産の松尾大作社長は、芝浦エリアの大規模複合開発における、舟運を含む臨海エリアの重要性について5月30日の会見でこう語った。 再開発とタワーマンション建設が進む東京臨海エリアの晴海や月島、築地などでは、さらなる増加が想定される住民人口に対して現状、交通アクセスの整備が十分ではない。 例えば晴海フラッグは住人約1万2000人を想定する一方、最寄り駅である都営地下鉄大江戸線勝どき駅まで徒歩約16分かかる。臨海部と都心をつなぐ新たな地下鉄路線の計画も進むが、2040年がめどと完成時期は遠い。 東京都は、定時性・高速性が売りのバス高速輸送システム(BRT)運航開始に取り組み、24年2月からは新橋と晴海フラッグをつなぐ路線も開通した。晴海フラッグ付近のターミナルから出る本数は、朝の通勤ラッシュが考えられる平日の午前8時台で5本。BRTは乗客定員数が多い連節バスであっても1台あたり112人なので、晴海フラッグの想定住民の通勤ニーズを満たすとは考えづらい。 そんな中、新たな通勤手段として注目が集まっているのが舟運だ。大手デベロッパーも、新たなまちづくりの要素として注目している。