逆風を歩き続けたKREVAのソロ20年 デビュー当時の悔しさもバネ「あの光景は忘れない」
ぼんやりと想像する50周年…「どんな“ラップじじい”だよ!」
――これまで、未開の地を切り拓いていったイメージが強くありますが、今後もそういった点は意識されていますか。 「面白いと思えればやりたいですかね。ただ、“音楽をやっている俺だから”っていうのが根底にはあると思うんです。例えば、俺がいい社長になるために税金の勉強をして、『今年は何十万円浮いたぞ』みたいなことを言い出したら、『つまんな!』って思っちゃいますよね(笑)。だったら、ずっと音楽をやっている方が今は大事です。だから、新しいことに挑戦するために手を伸ばすのではなくて、音楽をやっている俺を面白いと思ってくれる人がいて、そこから広がって、自分がやりたいなと思えることは、どんどんやっていきたいです」 ――同じフィールドだけで成長し続けることはとても大変なことですね。 「今回、この曲をここまでに作ると決めたリミットがあって、苦戦していました。そんなときに、AKLOやZORNと話す時間があって、そこですごく救われたんです。同じソロのラッパーで、アルバムも出していて、それぞれスタイルは違えど、同じ悩みを同じように感じてくれる2人でした。向こうから俺に聞いてくることもあるし、それに答えているうちに自分の中の答えが出てきたんですよね」 ――下の世代から刺激を受けることもあるんですね。 「たくさんありますよ。いいものを作っている人たちは、やっぱり頑張ってるんです。負けてらんないぞって気持ちになるし、『俺らしさとはなんだ』と改めて考えさせられます」 ――20周年イヤーについてはどのように捉えていますか。 「せっかくだから乗っかっていきたいですね。5周年は『まだ祝うの早いでしょ』とか思ってましたが、10年、15年、20年とありがたいなと思います」 ――今後のビジョンなどはお持ちですか。 「どうやったら石川さゆりさんの50周年に到達できるんだろうとかは思いますよね。俺が50周年となったらもう78歳。『どんな“ラップじじい”だよ!』って全然イメージ沸かないです(笑)。年を取っても第一線でやっているラッパーの先人がいないんですよね。アメリカでも、成功したラッパーは実業家になっちゃうんです。そこを自分が作っていくのかと考えると難しさは感じますよね」 ――なんとなくのイメージはお持ちなんですね。 「でも全然ですよ。本当に来週とかそのぐらいの前しか見てないです。将来のビジョンも全くないんです。毎日1つずつやっていく気持ちでいないとすぐにダメになりそうと感じるんです。いつ死ぬかも分からないですし、あまり先のことを考えないようにしています。 コロナ禍が明けて、年齢も上がってきたことでそういう思いが強くなってきましたね。先のビジョンばかりだと、何もやらないままそこに行っちゃいそうです。すぐいなくなっちゃうぞ、ぐらいの気持ちで曲作りに挑んでいかないと、どんどんダメになっていきそうなので、今は必死に頑張っています」 スタイリスト:藤本大輔(tas) ニット、パンツ/Maison MIHARA YASUHIRO ネックレス/VUGAS カットソー/スタイリスト私物
中村彰洋