「少数与党」下で独自の存在感をアピールする公明党 “選択的夫婦別姓”めぐりカギ握る立場に
103万円の壁では、自民党と共同歩調
一方、「103万円の壁」を巡る議論においては、公明党は自民党と歩調を合わせた。 国民民主党は、自民党と公明党との実務者協議の中で、計103万円となっている基礎控除と給与所得控除を。1995年からの最低賃金の上昇率に合わせて178万円へと引き上げることを与党側に求めた。 国民民主党の主張に対して公明党は自民党とともに103万円の壁の引き上げを行う考えを示しつつも、106万円、130万円の社会保険料の壁を取り払うことの必要性を主張したほか、最低賃金の上昇率ではなく物価上昇率に合わせて123万円へと引き上げる案を国民民主に提示した。 しかし国民民主党は与党側の提案に納得せず協議の席を立ったことで、3党の実務者協議は一度、暗礁に乗り上げた。 公明党が「103万円の壁」の議論において自民党と歩調を合わせた理由は、税収減による財源の問題に懸念があったからだ。ある党の幹部は「国民民主の主張する178万円まで引き上げたら、毎年8兆円の財源が減る。そこに関して国民民主は全くコメントしていない」「財源を考えないで決めると国民を騙すことになる」などと財源の問題を度外視して壁の引き上げを主張する国民民主党の主張に慎重な姿勢を崩さなかった。 結局、「103万円の壁」を巡る自民・公明と国民民主の実務者間の協議は、3党の幹事長間ですでに合意していた「178万円を目指して、来年から引き上げる」との合意に従って、引き続き実務者間で協議を行うことを確認し、議論は年を越えて継続することが決まった。
通常国会で注目「選択的夫婦別姓」へ独自の動き
このように公明党は、臨時国会では、少数与党の一員として、前例にとらわれない独自の動きをとった。 さらに2025年の通常国会に向けても独自の動きを活発化させている。 その1つが「選択的夫婦別姓の導入」への取り組みだ。 斉藤代表は12月18日の朝に出演したラジオ番組で、選択的夫婦別姓の導入に関して「男性も女性も実際に困っている人が多くいる。もう決断する時だ」と述べ、石破首相を説得する考えを示した。 同日の昼には総理官邸での石破首相との昼食会において、選択的夫婦別姓の実現に向けて、自公の実務者で具体的な検討を始めたいと提案したことを明らかにした。 斉藤氏は法案化を目指す具体的な時期については言及しなかったものの、立憲民主党の重徳政調会長は前日の17日に、公明党の岡本政調会長と会談を行い、選択的夫婦別姓の導入について意見交換したことを明らかにした。 「選択的夫婦別姓」の導入について、自民党内には賛成派もいる一方で慎重な声が多いが、公明党は導入に賛成の立場だ。 野党にも賛成が多く、法案を扱う衆院法務委員長は、賛成派の立憲民主党議員が務めていて、通常国会中に法案の提出や採決に至る可能性もある。 その状況下で公明党がどう動くかは選択的夫婦別姓の鍵を握ることになる。 このように、少数与党となったことで与党自体の力は落ちる一方で、公明党は、自民党と野党の狭間で独自の動きをとることで、逆に存在感を強めることを狙っているとみられる。 斉藤代表率いる公明党が今年、自民党との連立パートナーとしての立場は守りつつ、夏の参院選に向けて党の独自性をどう発揮していくか、そのバランスは石破政権と日本の今後を大きく左右しそうだ。 (フジテレビ政治部 与党担当 伊地知英志)
伊地知英志
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