星野リゾート、総スカン「大学1年でも内定」の意義 学生や採用担当者には不評だが隠された意図がある?
星野リゾート・星野佳路社長は、旧態依然とした体質のホテル業界にあって、数々の斬新な取り組みで成長してきました。今回の新制度も、「さすが星野さん、発想が斬新だし、タブーを恐れない姿勢は素晴らしい!」と、革新的な企業イメージをさらに高めました。採用活動のコストは上がるものの、宣伝効果ですでに十分ペイしているでしょう。 ■そもそも新卒一括採用を続けるべき? それよりも筆者は、今回の新制度が発端になって、「そもそも新卒一括採用を今後も続けるべきなのか?」という議論が活発になることを期待します。新卒一括採用は日本独特の雇用慣行で、近年その弊害が目立っているからです。
日本と違ってアメリカでは、学生が在学中の早期に内定をもらい、卒業後すぐに働き始めるというのは一般的ではありません。すぐに働こうと思ってもよい働き口をなかなか得られないので、多くがインターンでスキルと経験値を高めることからキャリアをスタートします。 どうしてアメリカでは、新卒一括採用が普及していないのでしょうか。アメリカではジョブ型雇用が普及していることが、最大の原因です。 ジョブ型雇用では、ジョブ(ポスト)に空きが出たら採用するという欠員採用が基本です。「工場を新設するので生産技術者を5人採用する」「経理担当者が1人退職したので交代要員を1人採用する」という具合です。
欠員採用では、入社したその日からバリバリ働いてもらうことを期待します。そのため、スキルが低く教育訓練が必要な新卒者よりも、即戦力である経験者の中途採用を優先します。AI技術者のような超人材難の職種を除いて、先物買いで新卒者を採用する理由はありません。 また、アメリカの大学では卒業のための単位取得が難しいので、学生は卒業するかどうか不確かですし、在学中に就活をする暇がありません。即戦力を必要とする企業は、ちゃんと卒業し、働き始めてくれるかわからない学生を当てにすることを躊躇します。