なぜロシアの女子フィギュアは強いのか。宮原ら日本勢との差はどこに?
前出の中庭氏が続ける。 「ジャンプのGOEにて、その部分を現在のルールで限界まで極めているのがロシアの2人メドベージェワ、ザギトワなのです。ジャッジは、どうしてもジャンプの入りや空中、着氷への工夫、流れや美しさなどが素晴らしいメドベージェワ、ザギトワのジャンプをGOE満点の3につければ、必然的に他のライバル選手らへのGOE評価は上がりにくくなります。ロシアの2人は、技術点、演技構成点のすべてにおいて、一段階上に抜け出たところにあります」 フリーの7つのジャンプの技術基礎点で言えば、宮原が47.54点でメドベージェワの46.73点を上回っているのだが、GOEと、演技構成点で大きな差が生まれている。 ザギトワと、メドベージェワは、ジャンプのほとんどに手を上げる工夫を加えGOE評価につなげている。またジャンプの前後に複雑なステップを入れ込み、これもまた加点と、演技構成点への評価を高めている。 これらの差はどこから生まれているのか。そもそもなぜロシアはこれほどまでに強いのか。 前出の中庭氏は、「浅田真央選手は世界のトップを極めました。日本人と欧米人との肉体的な違いは関係ないと思います。それよりも、この差につながったのは、ジュニア世代からの練習環境、生活環境、コーチング、サポート組織の違いだと思います。ロシアの練習拠点には、学校まであり、フィギュア選手の育成に必要なものすべてが、一箇所に揃い、練習に集中、専念できる環境が整っていると聞きます。2010年頃からソチ五輪を成功させるため、海外に流出していたコーチを呼び戻すなどしてきた国家的プロジェクトの成功が、今回の平昌五輪へとつながっていると思います」という。 ロシアには1970年に創立された「サンボ70」というナショナルトレーニングセンターがあり、その中に、2003年に設立された専用スケートリングを備えたフィギュア専門施設がある。ザギトワ、メドベージェワも、この施設から誕生した。施設内には、フィジカルのトレーニング施設は、当然のこと、ダンスやバレエのスタジオや、医務設備や陸上練習用の場所まであるという。 そして、キーマンが、“鬼コーチ”としてのエピソードが漏れ伝わってくるエテリ・トゥトベリーゼ女史(43)だ。ソチ五輪で、キャンドルスピンが有名になり団体金メダルを獲得したユリア・リプニツカヤ、メドベージェワ、ザギトワらは、すべて彼女の門下生である。 今回、ペアで4位に入ったロシア(OAR)のエフゲニア・タラソワとウラジミール・モロゾフが福岡で直前合宿を組んだため、中庭氏は、その練習風景を見学している。1つのペア組に様々な分野のスペシャリストがついていて、そのスタッフ人数の多さにびっくりしたと言う。