なぜロシアの女子フィギュアは強いのか。宮原ら日本勢との差はどこに?
「ロシアのトゥトベリーゼコーチが具体的にどんな指導を行っているかは、ベールに包まれています。私たちも知りたいですが…なかなかわかりません。ただ今回ペアの練習を見てわかったのは、あらゆる分野の専門家を集めてチームを組み、選手をサポートするという組織力です。ロシアでは、ソチ五輪の成功でフィギュアをする子供達が増え、多くの選手が8歳から3回転を跳ぶとも言われています。日本よりも多い競技人口があり、選りすぐりの選手が、学校もある、リンクもある、ダンスやバレエを学ぶ場所も集中してあるという環境で育成されるのですから、ほとんどが、クラブ単位の運営努力に任されている日本とは違います。加えて国内競争の激しさがあります。ザギトワが7つのジャンプを後半に集めるプログラムにしたのは、そうしなければメドベージェワに勝てないことがわかっていたからでしょう。きっと怪我がなければメドベージェワも3回転ループを後ろにつける難解な連続ジャンプに挑んだはずです」 ザギトワは15歳、メドベージェワは18歳。当然、4年後の北京五輪も狙える年齢だが、その下には北京五輪に照準を定める強力なジュニア世代が控えている。 昨年12月に名古屋で行われたジュニアグランプリファイナルでは、優勝がアレクサンドラ・トゥルソワ(13、ロシア)、2位がアリョーナ・コストルナヤ(14、ロシア)、3位がアナスタシア・タラカノワ(13、ロシア)とロシア勢に表彰台を独占された。トゥルソワは、回転不足と判定されたが、冒頭で4回転サルコーに挑戦している。トリプルアクセルを成功させた日本の紀平梨花(15、関大中)が、4位に食い込んだが、5位がダリア・パネンコワ(15、ロシア)、6位がソフィア・サモドゥロワ(15、ロシア)と上位をロシア勢で独占されたのである。トゥルソワ、コストルナヤは、いずれも200点超え。トゥルソワは、4回転だけでなく、3回転ルッツ+3回転ループの連続ジャンプまで決める。しかも、6位のサモドゥロワを除き全員が、トゥトベリーゼコーチ傘下の選手なのだ。 「日本の女子も様々な努力や試みにより、ジュニア世代には有望選手が増えています。ロシアに対抗できる1番の国は日本ですが、ロシアの“王国”は続くでしょう。日本はさらに国内競争のレベルアップを図る必要があります」というのが、中庭氏の見立て。打倒・ロシアには、オール日本のプロジェクトが必要かもしれない。