メガサイズのガラパゴスだった中国の本気IT革命…世界の最先端を行く中国の「スーパーアプリ」がインフラ化した理由
無人タクシーやライドシェア、ドローンを使った配達など、近年急速な進化を遂げた中国のIT・デジタル事情。その成長の中心には、もはや中国のインフラとなった「スーパーアプリ」の存在がある。中国社会の利便性を一変させたスーパーアプリと、その革新性について解説する。 【画像】広東省深圳市に本拠を置く中国のIT大手・テンセント。ソーシャル・ネットワーキング・サービス「WeChat」をはじめ、オンラインゲームコミュニティや動画配信プラットフォームなど、多くの事業を展開する
中国のインフラとなったモンスターアプリ
「中国のIT製品・サービスは、安いけれど品質は悪い」という通説は、令和の時代において、完全に過去のものになってしまった。 世界的に有名な通信機器大手・ファーウェイは、スマートフォンのチップ「Kirin9000S」を独自開発し、現在iPhoneの中国市場におけるセールスに大きな打撃を与えている。また、北京市では無人運転タクシーが営業運転を始め、深圳市ではドローンが高層ビル群の間をすり抜けて食品をデリバリーし、上海市では無人カートが宅配便を運んでいる。 そういったデジタル化のなかでも、2016年ごろから一気に普及したQRコードを使ったスマートフォン決済は、中国社会の利便性を一変させた。その象徴となっているのが「スーパーアプリ」だ。 実業家のイーロン・マスク氏は、Twitter(現X)買収当初から同サービスを「スーパーアプリにする」と語っている。これは「ひとつのアプリで、さまざまなことができるプラットフォームアプリにする」という意味であり、日本においても、「PayPay」や「LINE」といった大手サービスが「スーパーアプリ化を目指す」としている。 彼らが口にするスーパーアプリには、ひとつのモデルがある。それは、中国のIT大手・テンセントが開発したSNS「WeChat」だ(中国語では「微信」)。 テンセントの2023年9月期の有価証券報告書によると、WeChatの月間アクティブユーザー数(MAU)は13.36億人。これは海外利用も含んだ数字だが、人口14億人の中国でほぼ全員が月に一度はアクセスしている“モンスターアプリ”で、すでに中国のインフラのひとつになっている。