荒れる農地 歯止めきかず…心もとない食料供給基地の未来 「小さな農業にも目配りを」…知事に託す思いは切実だ〈鹿児島県知事選7月7日投開票〉
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全国2位の農業産出額を誇る鹿児島県。農業は基幹産業であり、食料安全保障(食料安保)の確保を基本理念に位置づけた改正食料・農業・農村基本法の成立により、食料供給基地としての役割も一層高まっている。ただ、担い手不足や高齢化により小規模農家を中心に離農が止まらず、生産体制は心もとない。 阿久根市脇本の農業、白浜和利さん(72)は「昔は多くの家が半農半漁で生計を立て、特に豆類の栽培が盛んだった。今は人口も減り、自分を含め農家は3戸。みんな70代であと5年できるかどうか」と漏らす。 白浜さんが暮らす脇本浜地区は2003年度には農家が17戸あった。587アールあった耕地面積もこの20年で約3割減少。白浜さん宅の隣の畑は、持ち主が亡くなり後継者もおらず雑草が生い茂ったままだ。 集落は緩やかな丘陵に位置し、土地が狭く、畑が小さいため生産効率が悪い。白浜さんも田畑が30筆ほどあり、移動だけでも時間がかかる。「若い担い手に農地をあっせんするにも条件が悪い。田畑が荒れると獣害の温床にもなるので、せめて活用を促すために農機のリース事業などで定年帰農を後押しできないか」
20年の農林業センサスによると、県内の農業経営体の数は2万9717で、9割強を占める個人農家を中心に10年で4割減った。県のまとめでは、22年度は全農地の1割に当たる約1万3000ヘクタールが耕作を放棄された荒廃農地となっている。 霧島市福山の佳例川地区は中山間地にあり、住民の7割近くが65歳以上だ。清流を生かした稲作で「佳例川源流米」をブランド化するが、自治公民館長で農家の冨永克義さん(66)は「住民だけで農地を維持するのは厳しい。企業や団体をコーディネートして交流人口を増やしてほしい」と訴える。 鹿児島大学や地元のトヨタ車体研究所などの協力で地域おこしに取り組むが、イベント以外での交流は少ない。社員のリフレッシュ休暇の一環で草刈りボランティアや収穫体験、社員食堂で米を使ってもらうなどのアイデアを掲げ、「農村の発展は無理だとしても衰退を食い止めることができるはず」と力を込める。
農村に人を呼び込む仕掛けとして、新たに集落をまるごと観光農園化する構想も抱く。海外には、国防や食料安保の観点からグリーンツーリズムを推進して農村を守る国もあるとして、「予算が限られるので認定農家の支援が優先されるのは致し方ない。ただ新しい知事には、小農にも目配りできる人になってもらいたい」。
南日本新聞 | 鹿児島
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