自民党総裁選 石破氏勝利で日銀・金融界の反応は
石破茂氏が自民党総裁選で決選投票の末、高市経済安保担当相を破って勝利した。どちらが勝利するかによって政策の方向性が大きく変わる金融業界の関係者らは、一回目の投票、決選投票の結果を見守りながら、右往左往する展開となった。 総裁選で、高市氏は積極的な財政出動を訴え、財政の健全性と両立できると主張。消費をさらに増やしていくために、日本銀行の追加利上げに否定的な考え方を示していた。日銀が大規模金融緩和からの正常化を進める中、「金利のある世界」で収益を増やしていきたい金融機関とは異なる方向性の主張に、金融業界、また日銀内でも高市氏勝利への警戒感が高まっていた。 一回目の投票で高市氏が1位に立つと、メガバンク関係者の間では「これはもう高市総裁か…」と悲観的な声もあがった。そこから一転、石破氏が決選投票で勝利すると、「高市さんではなくてよかったという感じはある」と思わず漏らす関係者もいた。 一方、新総裁になる石破氏に対しての金融業界の評価はどうか。 あるメガバンク関係者は、「石破さんは岸田政権の路線を踏襲するということだから、大きな心配はないのではないか」とみる。一方で、別のメガバンク関係者が懸念したのが、総裁選中に石破氏が見せた、金融所得課税の強化を検討する姿勢だ。この関係者は「打ち出し方によっては、新NISAで好調な、個人投資家の投資意欲に水を差しかねない」と警戒する。 一方、日銀の政策については、石破新総裁のもとでも、今後の利上げに向けて課題はある、との指摘も出ている。ある関係者は、日銀が利上げを続けていくことを市場が織り込み過ぎてしまうリスクがあり、その場合、結果として日銀と市場の対話がより難しくなる可能性があるのではないか、との見方を示した。 日銀の植田総裁は自民党総裁選前に、まずは新政権と密接な意思疎通を図っていく考えを示している。新政権と日銀の連携体制を構築していくことが、まずは当面の課題となる。