【#佐藤優のシン世界地図探索81】"非対称"なウクライナ最前線
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――9月19日、ウクライナのゼレンスキー大統領が、NYで行なわれた国連総会で演説しました。そして、24日にはトランプ前米大統領がゼレンスキー大統領を「彼が米国に来るたびに、1000億ドルを手にして帰国する。地球上で最高のセールスマンだ」と揶揄しました。 しかし、その3日後の27日、ゼレンスキーとトランプは、NYのトランプタワーで会っています。そこでトランプは、「大統領に就任するよりも前に、双方にとって良い結果をもたらすことができると思う」と発言。やはり、トランプは大統領になったら、即刻、無駄遣いをやめて......。ウクライナ停戦は、もう決定事項ですね。 佐藤 トランプはもう決めていますよ。共和党の副大統領候補のJ.D・バンス候補が提案しました。2022年3月の時点まででロシア軍がウクライナから引いて、ウクライナは中立化、そしてNATOには加盟しないという案です。十分現実性がある案だと思います。 ――9月14日に公開されたバンス候補のインタビュー動画で、和平案が提案されていました。「ウクライナはNATOに加盟せず、中立国とする。現在の前線を非武装地帯として、ウクライナが再びロシアの侵略を受けないように防備を固める」と。 佐藤 これは、ウクライナが2022年3月に一旦合意したイスタンブール合意の内容がベースになっています。 この案はボリス・ジョンソン英首相が、ウクライナまで来て暴れたため、破談になった合意です。この案には十分現実性があり、まとまる可能性があります。 ――このバンス副大統領候補の提案ならば、プーチン露大統領も支持すると思いますが、どうでありますか? 佐藤 支持するでしょうね。 ――するとこれが、ウクライナ戦争の落とし所になりますか? 佐藤 ひとつの落とし所となります。ただし、ウクライナ領はロシアに相当獲られますね。 ――そこをウクライナが我慢できるか......。 佐藤 クルスクはどうなりましたか? 10%ぐらいロシア軍が獲り返しましたよね? ――あそこは「獲り返す、獲り返さない」というより、ウクライナ軍にはあそこを占領地帯として維持する兵力、さらに長期間占領するための交代兵力がいないんですよ。 佐藤 すごい作戦ですよね。 ――だから、ウクライナ軍はどうするつもりなのか?