人に好かれようという言動も相手がハッピーになるなら別にいいじゃん…「あざとくて何が悪いの?」が意外にしっくり受け入れられた理由
センスのよい考えには、「型」がある #2
世の中で常識や定説と思われている物事に対して、本当は違うのではないかという仮説を立ててみる…これは「逆説モデル」と言われるが、これに近い切り口で人々の「隠れたホンネ」を見つけだし、大ヒット番組となったのが、テレビ朝日で放映されている『あざとくて何が悪いの?』だ。「人を動かすアイデア」を誰でも生むことができる「インサイト思考」に迫った『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。 【画像】『あざとくて何が悪いの?』を放送するテレビ朝日
「あざとい」をポジティブに
この番組の企画趣旨は「あざとい男女のリアルな恋愛事情や人間関係の処世術を全方位から深掘りしていく番組」ですが、この番組企画は、SNS時代における価値観の変化に鋭く着目し、若者の中での「あざとい」という言葉の使われ方が次のように「逆説的」に変わってきていることを非常にうまく捉えていると推論することができます。 みんな/世の中は、「『あざとい』とは、『小狡い・小利口な・抜け目がない・やり方がズルい・悪どさや図々しさを感じる』ことを表現するネガティブな言葉だ」と思っているかもしれないが、 実は/本当は、「『あざとい』とは、『男女関係や人間関係をスムーズにする処世術であり、つまりは、SNS時代に自分をよりよく見せられるポジティブな自己プロデュース術だ』」と自分は思う。 おそらく、番組の企画者ははじめに、「あざとい」という言葉が、今までの年長者が使うような非常にネガティブな使われ方ではなく、一部の若者の間でポジティブな意味で使われていることに対する「気づき」があったのではないでしょうか?
「何がいけないんでしたっけ?」
言葉の意味やニュアンスは時代によって、絶えず変化していきます。今では、当たり前のようにポジティブに「すごい」ことを表現するときに使う「ヤバイ!」という言葉も、昔は「危険だ」「かかわらないほうがいい」というネガティブな意味でしか使われていませんでした。「あざとい」という言葉が、このように時代の価値観によって、ネガティブな意味からポジティブな意味へと変化していく、そのタイミングを見事に捉えています。 特に、今までの「常識」を「『あざとい』ことは悪いことである」と改めて設定して、それに対する精緻に言語化された「問い」として「あざとくて何が悪いの?」という問題提起をし、非常に引きのある、気になる番組タイトルにしています。 そして、ゲストや視聴者の、具体的な「あざとい」シーンに関するイキイキとした対話を、そのまま番組コンテンツにしている点も大変秀逸です。「Marketing Native」というサイトに、番組企画者の芦田太郎氏(元テレビ朝日プロデューサー)のインタビュー記事が掲載されていましたので、そこから一部抜粋します。 「あざとさ」はネガティブなワードとして使われがちですが、田中みな実さんならタイトル通り「人に好かれたいとか、男性によく思われたいと考える言動を突き詰めて何がいけないんでしたっけ?」「相手がハッピーになるなら別にいいじゃん」と受け止めていただける人もたくさんいらっしゃるのではないかと考えた点が番組のベースになっています。 『あざとくて何が悪いの?』は強いワードですし、今までの価値観や概念を覆していきたいという僕らの意気込みや思想が投影されたタイトルだと思うので、しっくりくるものを付けられたと捉えています。(「細部のリアリティが共感を生む 株式会社テレビ朝日プロデューサー 芦田太郎」MarketingNative https://marketingnative.jp/sp10-01/)