週刊・新聞レビュー(12.2)「『メディアへの介入が甚だしい』安倍首相と自民党」徳山喜雄(新聞記者)
総理としてふさわしい発言か
衆院選をめぐり、安倍晋三首相や自民党のメディアへの介入ともとれる言動がつづいている。 衆院解散を表明した11月18日夜、首相はTBS系の「NEWS23」に生出演し、落ち着いた表情でキャスターの質問に答えていた。ところが、番組途中で街の声をひろったVTRが流され、「景気がよくなったとは思わない」「アベノミクスは感じていない」などの否定的な意見がでると、急に早口になってキャスターに詰め寄った。 「街の声ですから選んでおられると思いますよ」「事実6割の企業が賃上げしているんですから。これ全然、反映されていませんが。おかしいじゃないですか」 なかにはアベノミクスに好意的な声もあった。しかし、首相は、テレビ局が不利な内容を意図的に編集し、放映したかのように語気を強めた。 フェイスブック(FB)などネット上の発言も旺盛だ。 首相は25日、「批判されにくい子供になりすます最も卑劣な行為だと思います」と書き込んだ。 大学生が「小学4年生」になりすまし、解散・総選挙に批判的なサイトを開設、問題になった際の首相の言葉だ。しかし、ネット上で書き込みを疑問視する声がでると、これを削除し、「過ちを犯してしまったら、行動を改めればよい」と改めて投稿した。 このような出来事をひろって朝日新聞が11月29日朝刊で大きく報じ、「現政権はメディアへの介入が甚だしい。……自分に都合のよい意見しか聞かない、という姿勢を示している」(杉田敦・法政大教授)、「こうしたふるまいは、一国の総理大臣としてふさわしいとは思わない」(白井聡・文化学園大助教)との識者コメントを掲載した。 一方、安倍首相のFBには、記者の個人名をあげ、持ち上げるというものもある。 産経新聞29日朝刊によると、首相は28日、同日付の産経新聞に掲載された政治部編集委員の阿比留瑠比記者が執筆の「阿比留記者が行く」を紹介、「これから(阿比留記者が)何処に行って煙たがられるのか楽しみです」と投稿した。 阿比留記者は菅直人元首相の政治資金パーティーに取材にいったが、会場に入れてもらえず、朝日新聞の特別編集委員は制止もされずに会場のなかに消えた。「事務所側は『彼は(菅氏との)個人的なつながりで来た。マスコミとしてではない』と譲らなかった」(産経28日朝刊)という話だ。