終盤で「牙が抜けた」ききょう ファーストサマーウイカが振り返る「光る君へ」の清少納言
第37回(9月29日放送)では思いがけず定子の着物を着て登場するシーンがあった。放送を見て「定子の形見では」と気づいた視聴者がSNSに投稿するなど話題になった。
「あのときは衣装さんに『これ定子のですよ』と言われて、うわーって涙が出そうになりました。シーンに向かう気持ちがぐっと変わって、心情が広がりましたね」とスタッフの計らいに感謝する。
物語は一条天皇から三条天皇(木村達成)の世に移った。定子の忘れ形見である敦康親王(片岡千之助)は東宮(皇太子)になれず、定子の兄の伊周(これちか/三浦翔平)もこの世を去った。そんな中、第41回(10月27日放送)では彰子(見上愛)が開いた和歌の会に乱入する。
「あのシーンが一番しんどかったですね。突然やってきて一方的に毒を吐いて去っていくという。誰も幸せじゃない時間。でも、ああいう人いるよなあって思いました。(脚本の)大石(静)さん、さすがですね」
そんなききょうが、第43回(11月10日放送)で「恨みを持って生きることをやめようと思う」と隆家(竜星涼)に告げた。ただ、そこに至るまでの過程は描かれていない。
「急に『牙が抜けた!』と思いまいたね。闇落ちでいうと、闇から抜け出したような。どこまで能動的なものだったのかと考えました」と語る。「おそらく急に糸が切れる瞬間があったのかもしれない。もう限界だって。アスリートが引退するときのように」と解釈した。
■まひろは絶妙な距離感の存在
まひろとは文学的素養のある女性同士で「先輩後輩」の間柄だった。それから互いを認め合い、自身に起きた出来事を報告したり、意見を募ったりするような友人関係になっていった。しかし、道長(柄本佑)に対する思いですれ違い、大きな亀裂が生じた結果「友人」と言えるような仲ではなくなってしまった。
「同じ作家というだけで、同僚でもないんですよね。一緒に働いたわけではなく、寝食を共にしたわけでもない。ライバルといったら簡単だけど、この絶妙な距離感の存在って自分で作ろうと思っても作れない。後半のききょうとまひろの関係性を言い表すのはとても難しい。あえて一言で言うなら『縁』ですかね。縁といっても因縁、あるいは腐れ縁といったもの。そういう存在なのだと感じています」