高卒で就職予定もプロ注目選手となり大学に進学した城西大の新エース・阿部克哉
先輩たちが抜けても自分がいる
就職を有利にするために選んだ高校の野球部から、部員が100人以上いる城西大の野球部へ。環境は大きく変わった。「僕も背は高い方ですけど、体つきが全然違う。フリーバッティングを見ても、ピッチャーの投げる球を見てもレベルが高くて、試合に出られないと最初は思いました」。それでも阿部は地道に努力を重ね、少しずつ成長していった。 城西大は、濵田友哉コーチの指導のもとフィジカルトレーニングを強化しているが、阿部も3年間で体重が85キロから93キロまで増えた。それに加えて、フォームの修正などにも取り組んだ結果、ストレートの球速が上がり、より強いボールが投げられるようになった。 また、ウエイトトレーニングのあとは必ず、入念に柔軟体操をするよう心がけている。下級生のころに、筋肉が固まったままだとけがにつながるということを身をもって経験したためだ。そのおかげで、3年生になってからはけががほとんどなくなった。 阿部は、カーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップ、フォーク、ツーシームと多彩な変化球を投げるが、フォークとツーシームは大学に入ってから覚えたという。「球種は誰かに聞かない方がいいので、自分で考えて習得しました。(ツーシームを投げられるようになって)左バッターの外に投げれば凡打になるので、楽になりましたね。全然使い物にならなかった変化球も、チェンジアップは空振りが取れるようになって、スライダーも割と安定してきました。もっと球種を増やして、精度も上げていきたいですね」。 変化球の質が良くなったのは、狙う場所を定められるようになったからだ。「ピッチャーによって、落とす場所と狙う場所で分かれると思うんですけど、僕は狙う場所を定めることでストライクが入るようになりました。たとえば、スライダーはキャッチャーの肘を狙って外に落とします」。 日々成長を続けていく中で、昨秋にはチームが1部リーグに昇格した。1部で戦い続けているチームと初めて公式戦で対戦し、2部との違いを感じた。2部では空振りを取れていたストレートも、際どい球はカットされてしまう。低めに決めにいった変化球は、見逃されてしまう。そんな中でも、先輩から教わったことを生かして、阿部は結果を残していった。 「バッターの顔や仕草をしっかり見て投げるようにしています。見逃し方、スイングの軌道などを見ながらやると、ちょっとだけ何を待っているかなどがわかるので、スライダーを待っているなと思えば自信を持ってまっすぐを投げると、三振を取れたりします。先輩の教えが役に立っていて、それが成績を残せている要因のひとつかなと思います」