高卒で就職予定もプロ注目選手となり大学に進学した城西大の新エース・阿部克哉
リーグ戦前半、村上監督は右の中川、左の竹丸の二枚看板を中心に投手運用をしており、阿部は短いイニングのリリーフ登板が多かった。後半になると「来年のことも考えて」と、阿部を先発に起用した。10月7、8日の桜美林大戦では、2試合連続で阿部が先発。7日は4回1/3を投げ自責点0、8日は7回を投げ自責点1という成績で、チームも2連勝した。 2試合連続の先発登板となると、体への負担も気になるところだ。2日目の試合後、阿部はこう語った。 「昨日も投げていてスピードが出ないことはわかっていたので、コントロール重視で高めに浮かないように、ということを気にしていました。濵田コーチに『(188cmあるので)低めに投げたら角度が出るからスピードが出ていなくても打たれない』といつも言われていたので、自信がついていました。現に今日もそれほど打たれなかったので、ランナーが出ても焦ることはなかったですし、落ち着いて投げられました。筋肉痛があってきつかったですが、その中でどうすればいいかを考えられたので、これも自信になりました。チームのために投げようと思っていたのが、結果につながったので本当に安心しています」 後半フル稼働だった阿部は、リーグ戦が終わってみればチーム最多の35回1/3を投げていた。防御率は1.27、なんとリーグトップの成績を残した。 そんな阿部の人柄や野球への取り組みについて、村上監督の目にはどう映っているのだろうか。「絶対に悪いことはしないです。真面目過ぎて面白くないな、と贅沢なことを思うくらいの子ですね。何も言うことはない。上級生になってくると、活躍したら偉そうにデーンとベンチに座っていたりする子もいるでしょ。もちろんそういう子はきちんと正してから社会に送り出しますよ。でも、阿部はそういうことが一切ない。後輩にもきちんと向き合って話してあげています。そういう子って、意外と図太さを持っているのか、試合でも堂々としていますよね」。 取材で短い時間接しただけでも、阿部が真面目だというのはよくわかった。丁寧に言葉を選び、優しい口調で話す。そういう印象だった。そんな阿部が一度だけ語気を強めた瞬間があった。 それは「村上監督が、阿部のことを真面目だと言っていた」と伝えたときだった。最初は「ごく普通の人間だと思います」と優しく笑っていたが、その後「やらなくてダメになるのは嫌、やってダメな方が納得ができるので、自分のためだけじゃなくチームの来年のことも考えて自分がやろう、と思いながら練習をしてきました。中川さん竹丸さんが抜けたら(いい)ピッチャーがいないとずっと言われていて、そう言われるのは嫌なので」と少し言葉を強くした。 2部でくすぶっていたチームの1部昇格に、中川と竹丸が大きく貢献したのは間違いないが、昨秋チームが1部に残留できたのは、阿部の力も大きかっただろう。もう、ピッチャーがいないとは言わせない。