【神尾茉利さん】刺しゅうは美しく仕上げなくてもいい。「その人らしいいびつさ」「ノイズが残った作品」こそ魅力的【作品写真多数掲載】
「書店では刺しゅう本は手芸コーナーにしか置いてもらえないんです。刺しゅうをしない、でもかわいいものや本を読むことが好きな人に届けるにはどうすればいいのか悩みました。そういう人とは、小説を読む時に自分の好きなことを想像するのっていいよね、ときっと共感し合えると思って。私は刺しゅうが好きだから刺しゅうを想像しながら小説を読みますが、皆さんは自分の好きなことを想像して楽しんでくれたらいい。コーヒーでもいいし、おやつでもいい。〇〇小説、とジャンルが増えていったら楽しいですね」
美しい刺繍は、それができる人、得意な人がやればいい。“その人らしいいびつさ”“ノイズが残っているような”刺しゅうは魅力的
2018年には子どもが生まれ、作品作りも変化がありました。それまでは“手にした人に何かを考えてもらいたい“思いが強かったのが、“一目見てかわいいと思えるもの”“パッと見て楽しめるもの”へと意欲が変わってきました。 「20代の頃は、作品から何かを想像してもらいたい、物語を生み出してほしい気持ちが強かったです。でも子育てを始めてからは制作できる時間にも限りがあり、“役に立つ”“便利”“お得”とか“かわいい”“作りたい”とかが身近になり、実用性があってすぐに楽しめるものもいいなと思えるようになりました。20代の時には、そういったことは絶対したくないなと思っていたのですが(笑)。そんな時に本『ステッチをたのしむ刺繍レッスン』の声をかけてもらえたのは嬉しかったです。100個あるから好きなステッチがきっとひとつ見つかるはず、初心者からできるのでぜひやってみてください」 刺しゅうというとハードルが高く、「難しそう」「大変そう」と感じる人も多いはず。気軽に糸を通してみることで、思わぬ楽しさや喜びがあることを知ってほしいと神尾さんは言います。 「こう見えて私はせっかちなんですよ(笑)。でも、刺しゅうをしている間は“これをはやく仕上げるぞ!”という気持ちよりも、“これが出来上がって誰に見せようかな”“何か伝わったらいいな”みたいな気持ちが湧いてくるんですよね。刺しゅうは作って終わりではない、そこから先が続いていくものなんですよね。刺しゅうをやろうとした時、“美しく仕上げないと”とプレッシャーに感じる人もいるかもしれませんが、私にとっては糸が縫ってあればもう刺しゅうなんです。美しい刺繍は、それができる人、得意な人がやればいい。“その人らしいいびつさ”“ノイズが残っているような”刺しゅうは魅力的だと思います」