草笛光子、和服の着こなしも揺れ動く恋心も完璧な「哀愁日記」(1955年) 「婦人公論」に掲載された俳優魂を感じる言葉
【日本美女目録 草笛光子という女優】 1956年に松竹歌劇団(SKD)を退団した草笛光子。子供のころからバレエを習い、歌唱力にも秀でていたので、松竹から東宝に移ってもスター街道まっしぐらだった。 【写真】90歳で映画主演を果たした草笛光子 58年から始まった日本テレビの「光子の窓」。日本初の音楽バラエティー番組だが、冠番組自体まだ珍しい時代に、自身の名が番組名になるのだから、これこそ人気のバロメーターといえる。 オープニングで窓から顔を出してテーマ曲を彼女が歌う。これがウケた。歌がうまいことの証しだ。57年には日本コロムビアから映画「忘却の花びら」の主題歌でレコードも出している。 その人気ぶりは出演本数でも分かる。前回紹介した「ここに泉あり」を含めて55年だけでも「大学は出たけれど」「かりそめの唇」「江島生島」「伝七捕物帖 女郎蜘蛛」「第二の恋人」と7本に出演している。 今回は代表作「哀愁日記」(55年、田畠恒男監督)の前後編(高原の巻、渦潮の巻)。後年流行する昼メロを先取りしたストーリー。当時人気作家だった北条誠の小説が原作だ。 「甘美と哀愁に全女性の胸ときめく恋愛豪華大作」というポスターのキャッチコピーからも分かるように女性にターゲットを絞っている。 草笛が演じるヒロインの志津子は、男たちに翻弄されるが強く生きていく芯の強い女性だ。泣く泣く結婚相手を決められるが、その相手の友人から思いを寄せられて心が動くさまを、そそと演じている。洋服が似合いそうな草笛だが、和服も完璧に似合っている。 若いころは森繁久彌の「社長シリーズ」全33作のうち13本に出演するなど人気女優だった草笛だが、年を経て紀伊國屋演劇賞、菊田一夫演劇賞などミュージカルや舞台でも大活躍していることはご存じの通り。 そんな草笛の俳優魂を感じる言葉が、2021年10月26日号の「婦人公論」に掲載された「清水ミチコの三人寄れば無礼講」でのこんなコメントだ。 «借金してね。お金が払えないで赤紙を貼られたこともあるけど、「いまのうちに建てておこう」と思って地下に稽古場もつくったの。それだけは朝倉摂さんに褒められた。「女優は毛皮とか、体にくっつけるものを買うけど、よくぞ稽古場をつくった」って»