「核のゴミ」リスクが「たった300年」に超短縮?ビル・ゲイツが惚れ込む「高速炉」とは
もんじゅの再稼働が進まない中で起こったのが、2011年の福島第1原発の事故。事故後に定められた新規制基準への適合に莫大な費用が生じることから、政府は2016年にもんじゅの廃炉を決めた。 その後、日本はフランスの高速炉計画「アストリッド」に協力するが、同国政府が計画を中断。日本のFR開発には停滞ムードが漂った。しかし、近年におけるカーボンニュートラルの推進やエネルギー安全保障を強化する動きを背景に、風向きは変わりつつある。 ● ロシアや中国・インドでも 高速炉の開発は進んでいる 原子力発電所で主流の軽水炉は、動きの遅い低速の中性子によって核分裂反応を維持する。冷却材として軽水(普通の水)を使い、炉心の熱を取り出して発電に使う。ここで、軽水は中性子を減速する減速材の役割を兼ねている。 高速炉(FR)では中性子を減速せずにそのまま使う。冷却材に中性子が減速しにくいナトリウムを使うのはそのためだ。もんじゅの場合、まず炉心の熱で加熱された1次側のナトリウムが中間熱交換器に入り、2次側のナトリウムに熱を伝える。2次側のナトリウムはさらに蒸気発生器に入って蒸気を作り出し、それがタービンに送られて発電する仕組みだった。 しかし、ナトリウムは取り扱いが難しい。水に触れると爆発する特性があるからだ。加えて、ナトリウムの融点は約98℃と高く、常温では固体のまま。FRの内部で流体として利用するには、「電熱線でプラントを加熱するなどの工夫が要る」(原子力分野の専門家)。 さらに、ナトリウムは金属で溶けた状態でも水銀のように不透明な物質であるため、液体ナトリウムに浸された機器の様子を肉眼で観察できない。「軽水炉なら核燃料は透明な水に浸されている。水なら目視しながら交換作業ができるが、ナトリウムではそうはいかない」(専門家)。遠隔で燃料を交換するといった技術がより重要になってくる。 FRは原子力大国であるフランスや米国だけでなく、ロシアや中国、インドでも開発が進む。特に、ロシアは原型炉に当たるFR「BN-600」(電気出力600メガワット)を1980年代から運転し、稼働実績の面で先を走る。2016年には、さらに大型の実証炉「BN-800」(電気出力880メガワット)を稼働させた。 近年、米国や日本などの先進国がFRの開発で動きを見せるのは、カーボンニュートラルの推進だけでなく、こうした諸外国の動きも影響しているようだ。
斉藤壮司/佐藤雅哉