「核のゴミ」リスクが「たった300年」に超短縮?ビル・ゲイツが惚れ込む「高速炉」とは
核燃料には、HALEU(高純度低濃縮ウラン)燃料と呼ぶ、次世代原子炉向けの燃料を使う。ウラン濃縮度が5~20%と、軽水炉向けの低濃縮ウラン(同5%程度)よりも高い。HALEU燃料を使うことで、「燃料効率を軽水炉の3倍に高められる」(米テラパワー)。 ● 再エネ発電と原子力発電が 脱炭素で補いあう関係になる 米テラパワーはナトリウム冷却型の高速炉(FR)と溶融塩を使ったエネルギー貯蔵施設を組み合わせて運用する。溶融塩とは、文字通り高温で溶けた「塩」のことで、熱エネルギーを蓄える媒体として優れている。このエネルギー貯蔵施設を組み合わせて、原子炉で得られる熱を発電だけでなく「蓄エネ」にも使うという発想は、これまでの原子力発電所では一般的ではなかった。 原子力発電とエネルギー貯蔵を組み合わせると、電力負荷の変動に追従しやすくなるメリットがあるという。米テラパワー「ナトリウム」の原子力発電単体の電気出力は345メガワットだが、エネルギー貯蔵施設を併設することで、発電所全体の電気出力を、5.5時間にわたり最大500メガワットまで高められる。また、毎分10%の変動幅で出力調整が可能になる。 一般に、原子力発電は火力発電などと比べて、出力の柔軟な変更が苦手な電源だ。そのため、天候や昼夜を問わず一定の電力を安定して発電する、いわゆるベースロード電源として使われる。一方、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーによる発電は、天候不順などの影響で、出力が変動しやすいのが弱点だ。 そこで、米テラパワーは出力調整しやすいエネルギー貯蔵施設との組み合わせでメリットを出す。再生可能エネルギーが普及する電力系統にこのプラントを接続できれば、再生可能エネルギーと原子力という2つの脱炭素電源が、補完関係になるというわけだ。 再生可能エネルギー由来の電力の貯蔵方法としては、今のところ蓄電池が一般的に使われている。溶融塩によるエネルギー貯蔵の優位性について、米テラパワーは「グリッド規模のバッテリー技術よりも弾力性、柔軟性、コスト効率が高い」と説明する。