すれ違う切なさ HYのヒット曲で泣かせる恋の物語「366日」ほか3本 - Clone シネマプレビュー 新作映画評
■「アンデッド/愛しき者の不在」
大事な人を失った悲しみとどう向き合うべきか。長編初監督のテア・ヴィスタンダルが、「ぼくのエリ 200歳の少女」のヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの小説を映画化。生ける死者=ゾンビが恐怖ではなく、悲しみと当惑をまき散らすという視点が面白い。
ノルウェー。幼い孫の墓を訪れた老人は、土の下のかすかな物音を聞きつける。老女は、夜中、亡くなった最愛の女性がキッチンにいることに気づく。病院で突如生き返った母を見舞った家族が見たものは…。
恐怖表現はわずかだが内面を読ませない死者のうつろな瞳の不穏さが印象的。映像美と抑制的な演出が見事だ。ノルウェー・スウェーデン・ギリシャ合作。
17日から全国順次公開。1時間38分。(耕)
■「Welcome Back」
敗北に向き合うことは難しい。ボクシングを題材に、新たな居場所を探し求める敗者らの一風変わった旅の物語を、川島直人監督が佳作に仕上げた。
幼い頃からともに育ったテル(吉村界人)とベン(三河悠冴)。記憶力は高いがコミュニケーションが極端に苦手なベンは、新人ボクサー、テルの強さと自負心にあこがれを抱いてきた。だが、大阪の天才ボクサー、北澤(宮田佳典)にテルは完敗。衝撃を受けたベンは、北澤を倒すため大阪へと歩き出す。
敗者の華麗な復活劇ではない。壮絶な死闘と苦痛の末、テルが自分の敗北を受け入れ、ベンがテルという偶像を乗り越え成長する姿が胸を強く打つ。
10日から全国順次公開。1時間59分。(耕)