すれ違う切なさ HYのヒット曲で泣かせる恋の物語「366日」ほか3本 - Clone シネマプレビュー 新作映画評
公開中の作品から、映画担当の記者がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。 ◇ ■「366日」 今年、結成25周年を迎える沖縄の4人組バンド「HY」。昨年12年ぶりに出場したNHK紅白歌合戦で彼らが歌い上げた失恋ソング「366日」をモチーフに、沖縄の高校生、玉城美海(上白石萌歌)と真喜屋湊(赤楚衛二)の20年にわたる切ない恋の軌跡を描く。 脚本は、これが商業映画は初めての福田果歩。病気、すれ違い…と素材は典型的だが、悪意ある余計な人物が登場することもなく、思い合う2人がすれ違っていく切なさに焦点を絞った。 監督は、「四月は君の噓」など若者向けの恋愛映画を得意とする新城毅彦。結ばれ、ほぐれ、離れていく2人の運命を、淡々と、しかし緩むことのないテンポで見せる。 売れっ子の上白石と赤楚だが、抑えた芝居で、果てしなく青い海など沖縄の美しい風景の中に絶妙に溶け込む。 左右にゆっくりと動くカメラワークの多用が、やや気になった。韓国ドラマからの強い影響もありそうだが、なにはともあれクライマックスで流れる「366日」がドラマチックだ。 10日から全国公開。2時間2分。(健) ■「シンペイ 歌こそすべて」 ついに日本版「ボヘミアン・ラプソディ」の登場かといったら大げさだが、「ハチ公物語」などの神山征二郎監督が、「ゴンドラの唄」「シャボン玉」「東京音頭」と聞けば誰もが知っているメロディーを残した作曲家、中山晋平の生涯を映画化した。晋平役は映画初主演の歌舞伎俳優、四代目中村橋之助。 神山監督は実に淡々とエピソードを積み重ねるだけだが、母の葬儀の後の夜汽車の中で「いのち短し…」という「ゴンドラの唄」の歌詞に決然と旋律をつけていく場面など、突如としてものすごい力で心がつかまれる瞬間が何度かあるから、スクリーンから目が離せない。不思議で優れた音楽映画といえる。 10日から全国順次公開。2時間7分。(健)