コメの業者間取引価格高騰「例年の2倍なら販売可能」…昨年猛暑で供給減、コロナ禍経て外食需要増
コメの業者間取引価格が高騰し、米穀店から懸念の声が上がっている。2023年産のコメの供給が猛暑による品質低下で減り、需給が逼迫しているためだ。前年の2倍近くに上がった銘柄もあり、一部のスーパーでは販売価格を引き上げる動きも出ている。(川口尚樹) 【写真】水が張られた田んぼで動き回るアイガモ
スーパーでは値上げ
福岡市西区の米穀店「吉村商店」には今春以降、これまで取引がなかった外食企業から「50トン用意してくれないか」といった注文が寄せられるなど、商談の申し込みが相次いでいる。ただ、価格面で条件が合わないといい、同店の吉村正太代表は「新規の取引は、例年の2倍近い価格なら販売可能と答えている。そもそも仕入れができない銘柄もある」と困惑する。
コメの業者間取引は大きく2種類に分けられる。生産者と卸業者による年間契約などで価格を決める「相対取引」と、卸業者同士で手元の在庫を都度、確保するための「スポット取引」だ。価格が高騰しているのはスポット取引で、指標となる仲介業者クリスタルライスの5月下期の価格は、関東産「コシヒカリ」(60キロ・グラムあたり)が2万5958円と、前年同期より約9割高くなっている。
スポットによる取引量は相対の数%とされ、そのまま小売店の価格には反映されていないものの、影響も出始めている。福岡市内のあるスーパーでは6月から値上げし、福岡県産「夢つくし」(5キロ・グラム)が前月より2割高い2410円で販売されている。
冷静な対応を
農林水産省によると、23年の主食用コメの収穫量は前年比1・4%減だった。猛暑による品質低下から精米段階で不良が多く発生し、供給量が減ったとされる。一方で、コロナ禍からの経済正常化や訪日客の回復で外食向けの需要が拡大したことも、需給逼迫につながっている。
取引価格の高騰を受けて日本米穀商連合会が4~5月に緊急アンケートを実施したところ、「仕入れできる量が少なくなっている」との回答が66・4%に上ったほか、「仕入れることができない」も18・6%に上り、調達に苦労している実態が明らかになった。「問題なく仕入れている」は15・0%しかなかった。