「荒んだ心に蓋をしないと進めなかった」激動の時代と走ったSOPHIA松岡充「今世界に必要なのはどれだけ柔らかい心で包めるか。そんなのロックじゃないよというならロックじゃなくていい」
バンド結成30周年SOPHIA・松岡充の本音《後編》
2024年で結成、2025年でデビュー30周年を迎えるSOPHIA。1995年のデビュー作をオマージュしたアルバム『Boys and』のリリースを予定しており、夏には、デビュー当時と同規模のライブハウスツアーを開催する。デビュー時の葛藤、孤独や怒りを抱えながら駆け抜けた時間……ヴォーカルの松岡充が見据える今後の活動への思いとは。 【画像】激動の30年を語ったSOPHIA松岡
荒んだ感情に蓋をしないと前に進めなかった
――『BOYS』など過去の作品のオマージュをするにあたって、当時の気持ちを振り返ったり、今の曲作りに反映することはありますか? 30年間、時代が大きく変わる節目を実体験しながら、SOPHIAとして活動してきて。メディアも生活の環境も、周りの人も変わっていくじゃないですか。その荒波に揉まれて、怖さも味わってきた30年間だったので。 そのときそのときで、すごく心が荒んだし、投げやりになったし、孤独感もありましたね。その理由はひとつでははく、いろんな要因があって。ただ、そういった想いに蓋をしないと次に進めなかったんですよね。もういいや、全部やめだって言ったらそこで終わってたけど、そうはしなかった。でも、そのときの気持ちっていうのは、僕は消してないんですよ。
「最初で最後」の挑戦をしなければ人の心は動かせない
――蓋をしただけで、まだ松岡さんの中にあるわけですね。 はい。その正体をちゃんともう一回確認しなきゃダメだって、僕はずっと思っていて。それは、本当に心が荒むようなことだったのか。もしかしたら、あの頃ネガティブにとらえていたことの中に、誰かの優しさという宝が見つかるかもしれない、と。 当時は、そのネガティブなものが松岡充やSOPHIAの音楽の原動力になっていて。「ゴキゲン鳥」なんて、言ったらもう、嘆いてる曲じゃないですか。そして最後、「問題は俺か?」って、蓋をしてる。オマージュという作業の中でそういった当時の感情に向き合うことが挑戦になっていくんじゃないかなと思います。 ――蓋をした思いは今も忘れずに、引き出すことができるんですか? 引き出せます。でもそのためには、それに向き合うための体勢をとらなきゃいけない。それが今のこの活動なんですよね。そんな簡単に、パカッと蓋を開けて「ああ、こんなだったな」で向き合えるレベルではないので。そういう意味では、これが最初で最後って思えるようなトライをしていかないといけなくて。 これが最後なら、「こんな甘いジャッジはないな」とか「こんなモヤモヤした気持ちで進めていくのはイヤだ」って感じると思うんです。そういう気持ちで向き合わないと、人の心を動かしたり、人の人生に影響を及ぼす誰かにはなれないし、そういう作品も創れないと思う。