ある教授の試み 前田敦子、有村架純らの作品を教師育成に活用
帝京科学大学の教育人間科学部で教員を目指す若者たちを教える釼持勉(けんもち・つとむ)教授は、芸能人の書籍や映像作品などを講義に積極的に活用するなど、ユニークな着眼点と手法で知られる。未来の教員を育てる釼持氏に話を聞いた。
前田敦子の映画エッセーで力説スキルを
「前田敦子のエッセーって、この1冊しかないんです。僕はこれを、国語科の教材研究という授業で使っています」 研究室を訪れると、無造作に置かれた書籍類の中で、「前田敦子の映画手帖」(朝日新聞出版)が目についた。釼持氏は、すかさず説明する。 「映像文化を教育に、っていう僕の考え方があるのですが、前田敦子が分析している作品を実際に学生に観てもらって、彼女が書いた文章と照らし合わせ、どんな意味でこれを言ったのか考えてもらう。それから、たとえば小学生に見せたい映画をあげてもらって、どうしてなのか理由を説明させる。力説するスキルをつけなさい、っていうことを教えています」
「ビリギャル」決め手は親と教師の力?
映画が大好きだという釼持氏は、これまでにもスタジオジブリの「借りぐらしのアリエッティ」など、さまざまな映像作品を授業で使ってきた。人気書籍を映画化してヒットした有村架純主演の「ビリギャル」もその一つだ。 「『映画ビリギャルと有村架純の魅力』というタイトルで小論文を書いて、それを学生に説明しているんです。実際に『ビリギャル』の大事な場面を30分ほど見せて、では今日はこの形式で書いてみようか、って小論文の書き方を教えるんです」 素行不良で低学力の女子高生ヒロイン・さやか(有村)が一発逆転、約二年でめざましく偏差値を上げて慶應大学に現役合格をするという、実話をもとにした「ビリギャル」。果たして、どこがどのように授業に役立つのか。 「教育のなかで自分を支えてくれたのは、結局は母親と塾の坪田先生だと。やっぱり母親と教師の力、これが一番です」 そう言って釼持氏があげた場面の一つが、学校での居眠りをとがめられ、吉田羊演じる母親が担任教諭に「卒業だけはさせてやってくれ、そうじゃないと大学へ進学できない」と、直談判に行く場面だ。 「娘は本気で頑張ってるんです、と。『あの子はいったい、いつ寝ればいいんですか。学校しか寝る場所がないんです』と訴える場面があります。親としてそういうこと言えるかな、なかなか言えないよね、って。親の力って大きいな、とかね。そういうことを考えて欲しいし、学んで欲しいわけです」