米不足で露呈した「日本の農政」の異様さ…「日本の米に未来はない」と専門家が断言する、衝撃の理由
備蓄米を流通させなかったワケ
8月末、大阪府知事は、「備蓄米を流通させてほしい」と政府に要望。けれど、政府は、「全国的に見て需給は逼迫(ひっぱく)しておらず、備蓄米を開放する予定はない」と回答した。 「1993年の大不作をきっかけに政府は、1995年から毎年100万トン程度のコメを備蓄しています。この備蓄米をもっと柔軟に運用すべきでした」 どのような状況になったら備蓄米を放出するのか。数値を決めていれば府知事も国民も納得したはずだというのだ。 「役所は面子を重んじます。コメは余っていると言い張ってきた以上、放出すると自分たちが間違っていたことを認めることになる。備蓄米を流通させる状況ではないと判断したのでしょう」
そもそもの発端は「減反政策」
2024年の夏は、南海トラフ巨大地震の注意報が出たことでコメを買いだめした人も多かった。 「買いだめもコメ不足を招いた要因のひとつですが、そもそもの発端は政府が長年続けてきた『減反政策』にあります」 減反政策は2006年に廃止されたことになっているが、実はいまも実施されているという。 「さらに最近ひどいのは、財務省を中心に、農水省以上に権限を持っている財政当局の政策が短絡的になってきています。コメは余っているのだから田んぼを畑に変えてしまおう、田んぼをつぶせば一時金を出す、という政策を導入しています」
米農家がおかれた現状
なぜ「コメはもっと高くていい」のか。米農家がおかれた現状を説明してもらった。 「海外情勢の悪化で、肥料が2倍近くになり、燃料代も5割高。現在の正確な統計はまだ出ていませんが、コメ1俵(60キロ)のコストが16000円とか17000円になっている可能性が高いです」 農協が米農家に払う概算金(集荷時に支払う前払い金)は地域により異なるが、2023年はコメ1俵が12000円ぐらい。今年は上がったとはいえ16000円とか17000円程度。 「やっとトントン。これでは利益が出ず赤字が膨らむ一方。辞める人が続出しています」