城氏が語る「フランスのW杯優勝に見えた伝統と新しい時代のサッカーの形」
また今大会ではVARシステムが初導入され、決勝のハンド判定も含め勝敗に大きな影響を与えた。これまでならば見過ごされていた反則が取られてPKに変わったり、逆にPKが取り消されたものもあった。アディショナルタイムが長くなることや、プレーの流れが切れるなど賛否もあったが、私は成功だったと考える。 本来、一番、選手自身がわかっている、見えているものに対して、正確なジャッジが下されることで、スポーツとしての競技性が高まり、選手はゴール前で緊張感を持ち正確なプレーを求められるようになった。 ネイマールの大げさに反則をアピールする“ダイブ”が批判の対象になったが、南米の選手が得意としてきた“マリーシア(ずる賢さ)”が、もう通用しなくなった。南米のチームが、ベスト8に残らなかった理由に、VAR導入が直結しているとは言わないが、これからは、ゴール前で新しい形での駆け引きが必要とされるだろう。ブロックひとつにしても、手を使うのか、使わないのか。スライディングもより正確にボールへ向かうことが求められ、技術の追求の仕方も、正統派へと変化していくように思える。どちらかというと“マリーシア”が足りないと指摘されてきた日本にとっては追い風となるのかもしれない。 メッシ、ロナウドが決勝トーナメントの1回戦で姿を消し、次世代のスター候補である19歳のエムバペが決勝で輝きを放った。拮抗した試合が多く、面白く、楽しかったロシア大会は、新しい時代への扉を開くワールドカップになった。 (文責・城彰二/元日本代表FW)