過労死防止法制定から10年、労災件数は“増加傾向” 「夫の死むだにしないで」遺族らシンポジウムで講演
「夫の死を教訓とし、むだにしないでほしい」
シンポジウムには、家族を過労死で亡くした4人の遺族も登壇し、切実な思いを語った。 宮城県在住の大泉淳子さんの夫は中学教諭として「担当教科の英語の楽しさを伝えたい、部活動で得意のバレーボールを教えたいと、生徒と真正面から向き合い、体当たりで取り組んでいた」という。 しかし、休日も出勤せざるを得ない多忙さや、生徒による授業妨害、給食に睡眠薬を入れられるなどの嫌がらせもあり、うつ病を発症。帰らぬ人となった。 大泉さんは「教師の多くは、日常的に多岐にわたる業務を行っている。多忙で過重な勤務を抜本的に見直してほしい。夫の死を教訓とし、むだにしないでください」と訴えた。 また、海外(タイ)に赴任していた息子が自死した富山県在住の上田直美さんは、自死の原因が過重労働などによるものでありながら、会社からは「転落事故として労災申請をしたい」と申し出があったといい、「息子にうそをつくことができるはずがない」と断ったことを振り返った。 「海外で働く日本人にも関心を寄せていただければ幸いです」(上田さん) ■榎園哲哉 1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。
榎園哲哉