過労死防止法制定から10年、労災件数は“増加傾向” 「夫の死むだにしないで」遺族らシンポジウムで講演
労働時間減少傾向も労災件数は増加
厚生労働省からは佐々木菜々子労働基準局総務課長が登壇し、令和6年版「過労死等防止対策白書」を基に、過労死等をめぐる現状などを報告した。 まず労働時間について、週労働時間が40時間以上の雇用者のうち、60時間以上の雇用者の割合は減少傾向にあるといい、「業種別の状況では、一部に増加している業種もあるが、多くの業種が横ばい、あるいは減少している」と説明。 勤務間インターバル制度(1日の勤務終了後から翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間を設ける)の導入割合や、年次有給休暇の取得率が増加するなど、企業においての対策は拡大しているという。 しかし、「脳・心臓疾患は前年度より増加し、令和5年度は216件と4年ぶりに200件を超えた。死亡件数も前年度より増加し58件だった。精神障害は令和元年度以降増加傾向にあり令和5年度は883件。自殺・自殺未遂も4年ぶりに増加し79件あった」として、民間雇用労働者の労災件数がいずれも増加傾向にある現状を伝えた。
弁護士「あしき習慣続く企業も」
過労死等防止対策推進全国センター・共同代表の川人博弁護士は、一部には対策が行き届いていない現状があるとして、次のように述べた。 「働き方改革によって長時間労働の規制が行われるようになった。それにより、労働時間短縮や職場改善が行われているところももちろんあるが、一方で、実際よりも少ない、過小な労働時間数を公式的な労働時間数として装う傾向も後を絶たない。 たとえば、労使間の協定により時間外労働規制の上限を月に50時間と設定した場合に、50時間を超える時間外労働があっても上司が部下に申告させない、というような“あしき慣習”が続いている企業もあるのが実情だ」 また、移動を伴う勤務や出張の多い勤務について、移動時間を労働時間に認定しないケースなどもあると指摘した。 「過労死等を減らすには、労働時間数の正確な把握、適切な認定がとても大切だ」(川人弁護士)