ハリルの所信表明会見から見えた期待値とは?
ヴァイッド・ハリルホジッチ氏(62)の日本代表監督就任会見が13日、都内のホテルで行われ、饒舌に1時間弱も熱弁したハリルホジッチ新監督は、「自信を失いかけている日本代表に勇気と勝利に対するメンタリティを植えつけたい」と約束。ロシアW杯出場と、決勝トーナメント進出、結果として日本のFIFAランキングを過去最高だった15位までに引き上げることを具体的な目標として掲げた。 明日からJリーグを視察。27日のチェニジア戦、31日のウズベキスタン戦から指揮を執るが(メンバー発表は19日)、新監督は「私は負けず嫌い。この2つの試合は絶対に勝利しなければならない」と白星発進を宣言した。 「親友だ」というほど親交の深い、元日本代表監督のイビチャ・オシム氏が持っていた厳格な信念や斬新な戦術、戦略に、勝利のメンタルを重要視する激情家の一面をプラスしたような人物に思えた。
紺色にストライプの入った日本代表の公式スーツに公式ネクタイ。白髪の新監督は、威厳を漂わせ、報道陣で埋まった東京プリンスホテルの壇上に現れた。イビチャ・オシム氏と同じく、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のハリルホジッチ新監督の記者会見は、現役時代を含め、人生の大半を過ごしたフランス語で行われた。今後専属通訳となる樋渡群氏の訳が時折間に合わないほどに饒舌だった。 自らの哲学や考え方を身振り手振りを交えながら繰り返し語る姿には、「フットボールに人生を捧げた」人の情熱と自信が滲み出ていた。 「要求はかなり高い」「負けることが大嫌い」「勝利に対する気持ちを植えつけたい」 会見で語った、この3つの言葉が、ハリルホジッチ新監督を表している。 ハリルホジッチ新監督は、戦術家で、相手を研究して変幻自在のシステムを採用する。アルジェリアを率いたブラジルW杯では、対ベルギーには「4-3-3」、対韓国では「5-4-1」、対ロシアでは「4-2-3-1」とシステムを変え、決勝トーナメントのドイツ戦では、「5-1-3-1」で臨み、あわやのジャイアントキリングを起こしかけた。 この日、求めるサッカースタイルを問われた新監督は、「フットボールには2つの面がある。ボールを持っているとき(オフェンス)と、ボールを持っていないとき(ディフェンス)の2つだ。現代フットボールでは、ディフェンスの際には、ブロックを作って全員で守らねばならない。そのブロックの位置には、高い、低い、中くらいとあるが、全員が守備に努力して1人でも欠けてはならない」と、まずは守備に対する基本的な考え方から述べた。 その回答には、戦術の話と同時にハリルホジッチ新監督が求めるチーム像が見えた。チームのために献身的に汗をかく選手を求め、全員にハードワークを求めるハリルイズムである。逆に言えば、例え能力が高いスター選手でも、チームのために働かない選手はいらないということになる。 「貢献できる選手が必要。チームがスターなのだ。スターでもチームのために仕事してもらわねば困る」 そうまで断言した。コートジボワール監督時代には、チームには、スーパースターのドログバがいたが、決して特別扱いはしなかった。この日の会見では、個人名は出なかったが、本田圭佑や香川真司、遠藤保仁あたりの守備への意識が少しでも下がれば、ハリルホジッチは、思い切った采配をふるうことも十分に考えられる。