おいしくないのはなぜ? 機内食の味が変わる3つの要因
機内食専用に作られた食べ物と飲み物
こうした味覚障害に対抗するため、機内で楽しめるように考案されたメニューを提供する航空会社が増えている。アラスカ航空ではここ1年ほど、「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」と「フレモント・ブリューイング」と提携し、機内専用のコーヒーとビールを製造している。 「フレモント・ブリューイング」は長年アラスカ航空にビールを供給してきたが、初めて同航空会社専用に醸造した特注クラフトビールが「クラウド・クルーザー」だそう。このビールを開発する際、「フレモント・ブリューイング」の創設者兼最高経営責任者のマット・リンスカムさんは、麦芽原料(大麦と穀物)とホップの2つに力を入れた。 「色の濃い麦芽を使用すると、とくに高度の高い場所では、腐敗や段ボールのようなビールの味に感じてしまう恐れがあります」と彼は話す。これに対応するため、開発チームはビールから濃い色の穀物をすべて排除し、軽くて淡色のツーロウ・ペール・モルトとミュンヘン・モルトを残した。 さらに開発チームは、空の上でも新鮮な風味が持続するホップ(シトラス、シムコー、ブラボー)を選んだ。「この3種類のホップは、高度の飛行の厳しさに耐えることができます」と彼は話す。「味が落ちず、カビ臭くならず、爽やかですっきりとした飲み心地です」 また彼らは、「クラウド・クルーザー」のアルコール度数も考慮する必要があったそう。「アルコール度数が低すぎるビールは飛行中の圧力に耐えられず、すぐに味が薄くなります」と彼は話す。「逆にアルコール度数が高すぎるのも、飛行機には当然適していません」
機内食用に設計されたメニューや商品は、フライトによる影響を緩和する一つの方法ではあるけれど、変更するのが難しい部分もある。「食べ物の味は、地上で食べるときとまったく異なるものになりますが、人々は変化を好みません」と話すペレグリーノ博士。 味覚や嗅覚に影響を与える騒音から、座り心地の悪い座席、プラスチック製の食器、概日リズムの乱れなど、ペレグリーノ博士いわく飛行中にはさまざまな変数が作用するという。「全体的な食事の性質の違いが問題になるのではないかと思います」 「友達と一緒に、素敵なレストランで重い銀食器を使ってステーキを食べるのと、公園で紙皿の上のステーキを一人で食べるのとでは、大きな違いがあるでしょう」
translation : Mutsumi Matsunobu cooperation : Yumi Kawamura photo : Getty Images