トランプ大統領の機密漏えい疑惑 情報が第三国に? 頭の痛いイスラエル
トランプ大統領が中東外遊、22日にイスラエル
トランプ大統領は22日、サウジアラビアからイスラエルに移動し、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長と会談を行う予定だ。余談だが、サウジアラビアからイスラエルへの直行便は過去に存在せず、今回が初めての例となる。トランプ大統領とネタニヤフ首相の会談は、中東和平交渉がメインになるとの見通しが強いが、外遊前に発覚したロシアへの情報提供をめぐるイスラエルの対応にも注目が集まっている。 トランプ大統領によるロシアへの機密情報提供の疑いを受けて、イスラエルの情報機関が他国との情報共有に慎重になり始めたとも。イスラエルの日刊紙「ハーレツ」は17日、イスラエルが戦略的理由から行ってきたトルコ情報機関との情報共有に慎重論を唱えている。 トルコ国家情報機構(MIT)のハカン・フィダン長官は親イラン派として知られているが、これまではエルドアン政権との信頼関係のもとに情報共有が行われてきた。トランプ大統領が各国の情報機関の間に存在する不文律を無視する形で、機密情報を第三国に提供するという例を作ってしまったため、イスラエルにとって「長年の敵」であるイランに機密情報が渡らないかという懸念が生まれている。イランといえば、トルコだけではなくロシアも武器輸出などで接近を見せており、イスラエルにとっては頭の痛い問題である。 アメリカが同盟国と行う情報共有といえば、第2次世界大戦後にアメリカとイギリスの間で交わされ、英語圏の3か国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)が後に加わったUKUSA協定が有名で、英語圏の5か国による情報の収集や共有は「ファイブアイズ」という別名でも呼ばれている。先月後半には、リゾート地として知られるニュージーランドのクイーンズタウン近郊でファイブアイズの会合が開かれ、解任される前のコミーFBI長官も出席していた。トランプ大統領のラブロフ外相への情報提供は、70年近く続いてきた同盟国間の信頼関係にも少なからず影響を与えそうだ。
---------------------------------- ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト