地上80メートル「巨大風車」 命綱を付けてメンテナンス…新人技術者に密着【バンキシャ!】
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政府が今後、大幅に増やしていく方針の風力発電は、二酸化炭素や有害物質を排出しないクリーンエネルギーです。地上80メートルで行う巨大風車のメンテナンスをする技術者たちの命がけの仕事とは? 後呂有紗キャスターが「ベタバリ!」しました。【バンキシャ!】 *** 後呂有紗キャスター 「見えました。山の向こうに大きな風車が見えてきました」 北海道稚内空港から車で10分。 後呂キャスター 「車一台がぎりぎり通れるくらいの山道を登っています」 その先に… 後呂キャスター 「上を見上げるとよろけるくらい。目の前にくると真っ白い壁」 丘の上に立ち並ぶ、巨大な風車。稚内市は、風速10メートルを超える日が年間90日以上あり、約120基の風力発電機が設置されている。 後呂キャスターが見たのが… 後呂キャスター 「(地上よりドローン映像を手元でモニター確認)高い!」 地上およそ80メートルで行われるメンテナンス作業。危険と隣り合わせの現場で働く新人技術者がいた。永田一弥さん、37歳。 以前は別の会社で船舶の整備を行っていたが、旅先で出会った風車に魅了され、一念発起し転職。 永田一弥さん 「風向計、よし!」 風車のメンテナンスをする新人技術者。その現場にベタバリ! *** バンキシャ!は、風力発電事業の管理を行っている事務所を訪ねた(ユーラスエナジーホールディングス)。 バンキシャ! 「日本テレビのバンキシャ!です」 永田さん 「よろしくお願いします」 2024年4月に入社した永田一弥さん。家族が住む札幌を離れ、単身で稚内へ。これまでのキャリアを捨て、ゼロからの再スタートを決めた。 そんな永田さんを指導するのは、15歳年下、22歳の千葉大地さん。 千葉大地さん 「ブレーキお願いします」 永田さん 「はい。ブレーキかけます」 夢だった風車のメンテンナンス技術者になるため、研修を行う日々。しかし、クリアしなければならない関門があった。 国際基準の訓練を受けなければならない。そのためには、緊急時にそなえ、高所からの降下訓練、救助訓練、火災からの脱出訓練などだ。 まずは、高さ10メートルからの緊急降下訓練。 教官 「持ち替えて(カラビナを装着)片足ずつ。緊急です。脱出」 永田さん 「脱出します」 「降下しました」 「実際は80メートル上でやらないといけない」 永田さん、降下訓練はクリア。次は、この約30キロの人形を使う。緊急時にケガをした同僚を地上まで下ろす訓練だ。 永田さん 「上で初めてやるのは混乱しそう」 最後は、火災で発生した煙の中から脱出する訓練。 訓練生 「ハッチ発見」 教官 「脱出!」 視界が悪い中、なんとかハッチを発見し、これもクリア。他にもAEDを使った心肺蘇生など、緊急時の対処法を学んだ永田さん。 10日後、待望のメールが届いた。国際基準の訓練の修了証。 永田さん 「入口にやっと立てたので頑張っていきたい」 これで晴れて、独り立ちができる。 *** 7月、風車のメンテナンス技術者として、デビューする日。現場に後呂キャスターが向かった。 後呂キャスター 「今の心境は」 永田さん 「緊張しますが、千葉さんに何かあれば教えてもらいながら頑張りたい」 千葉さん 「今日は期待しているので、頑張ってもらえたら」 永田さんたちがつけているのが、フルボディハーネスという特殊な装備だ。特別に背負わせてもらった。 後呂キャスター 「おおー、重い」 永田さん 「7キロぐらい」 これを付けて、約2時間、作業を行うという。そして、いよいよ風車へ。 後呂キャスター 「どうやって上までのぼる?」 永田さん 「こちらのリフトで」 今回、先輩の千葉さんのヘルメットにカメラを付けさせてもらい、作業の様子を撮影する。 永田さん 「あがります」 後呂キャスター 「リフトがあがっていきます…ゆっくりと」 リフトに乗ること4分… 永田さん 「ナセルに着きました」 到着したのは、ナセルという機械室。まず、羽とつながるシャフト部分の破損などを目視で点検する。 先輩 「ボルト、よく見てほしい。下から見えます? 見えてます?」 永田さん 「はい」 次に、火災を防ぐためホコリや油汚れを拭き取る。 永田さん 「暑いです」 エアコンがない、ナセルの中。夏場の作業には、水分補給が欠かせない。 この風車1基で約1900世帯分の電力を供給。総工費は、約10億円。故障の見落しは大きな損害につながってしまう。 そして、ナセルの外、最も危険な地上80メートルの現場へ。 永田さん 「あがります!」 点検用のドローンを飛ばし、その映像を特別に見せてもらった。 後呂キャスター 「ハッチが開きました。永田さんが出てきました」 カラビナを床のワイヤーや金具に取り付け、命綱にして移動。 後呂キャスター 「こうやって、かけ替えて動いていく」 まず点検するのは、「風向風速計」。 後呂キャスター 「いまはどういう作業を?」 技術者(奥園さん) 「ボルトの緩みを確認していますね」 後呂キャスター 「一歩外に出たら80メートルの高さです…」 「風向風速計」が風の吹く方向を感知し、それに合わせて風車が自動的に向きを変える。重要な計測器だ。 永田さん 「こちらは異常ない」 先輩 「下にケーブルが通っている」 その点検中、永田さんがあることに気づいた! 永田さん 「ちょっとシリコーンが割れている」 風向風速計の基礎に、シリコーンの割れを発見。こういった小さな損傷は人の目でないと確認できない。 永田さんたちは、1日2基ずつ、ほぼ毎日点検作業を行っている。 点検が終わると… 後呂キャスター 「のぞきこんでいます!」 千葉さん 「見えてる」 地上にいる後呂キャスターに手を振ってくれた。2時間ほどで全てのメンテナンスが終了。 後呂キャスター 「お疲れ様でした」 永田さん 「お疲れ様でした」 後呂キャスター 「作業を終えていかがでした?」 永田さん 「まだ上手にできなかった」 後呂キャスター 「千葉さんからみて?」 千葉さん 「意外と私が気づかなかったところにも永田さんが気づいていた」 永田さん 「ありがとうございます。もっともっと頑張っていきたい」 *9月8日放送『真相報道バンキシャ!』より